共同研究・競争的資金等の研究課題

2020年4月 - 2024年3月

金属─14族元素反応場を活用した普遍金属による不活性分子の直接変換

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(B)  基盤研究(B)

課題番号
20H02751
体系的課題番号
JP20H02751
配分額
(総額)
18,070,000円
(直接経費)
13,900,000円
(間接経費)
4,170,000円

我々はこれまで、ケイ素やゲルマニウムなどの第14族元素から構成される有機配位子が遷移金属中心に対し強い電子供与性を示し、かつ高いトランス影響を示すため、これらの第14族元素を金属上に導入した錯体を合成することで、高度に電子豊富かつ配位不飽和な高反応性錯体の効率的な構築が可能であることを見いだしてきた。この性質に立脚し、高反応性ベースメタル錯体・触媒の開発を指向し、鉄やマンガン中心にケイ素配位子を導入した錯体の合成と、それらを活用した触媒的変換反応の開発をおこなっており、ケイ素配位子を導入したベースメタル錯体触媒が、従来では貴金属触媒により主として達成されていた様々な変換反応に対し高活性を示すことを見いだしてきた。
今年度は、鉄中心に対しかさ高いケイ素配位子を導入した鉄ジシリル錯体が、水素分子を効率的に活性化可能であることを見いだし、鉄触媒によるアルケンの高効率的水素化を達成した。本反応ではまず、比較的高い反応性を示す1置換アルケンの水素化に対し、開発した鉄触媒が高い触媒活性を示すことを見いだした。さらに多様な基質を用いた反応へと展開したところ、3置換アルケンや4置換アルケンなどの、立体的な制約により水素化が一般に困難なアルケンの水素化に対しても、本鉄触媒は良好な触媒活性を示すことを見いだした。これらの多置換アルケンの水素化はIrやRhに代表される貴金属触媒を用いた汎用手法においても困難であることが知られており、ケイ素配位子を導入した鉄触媒が高い触媒性能を示すことを明らかにした。さらに反応機構解析を行うことにより、水素分子は鉄ーケイ素結合上で活性化されており、その後発生する鉄シリルヒドリド錯体が鍵活性種として機能していることを見いだした。この活性種は、鉄周りに広い反応場を有しているため、多置換アルケンなどのかさ高いアルケンの水素化に対しても触媒活性を示すことが示唆された。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-20H02751
ID情報
  • 課題番号 : 20H02751
  • 体系的課題番号 : JP20H02751