共同研究・競争的資金等の研究課題

2019年4月 - 2022年3月

GNSS搬送波位相を活用した測位を伴わない広帯域地殻変動モニタリング手法の開発

日本学術振興会  科学研究費助成事業  特別研究員奨励費

課題番号
19J20145
体系的課題番号
JP19J20145
配分額
(総額)
2,500,000円
(直接経費)
2,500,000円
(間接経費)
0円

本研究はGNSS搬送波位相変化から直接断層すべりを推定する手法,PTSを用いた広帯域な断層すべりモニタリングの確立を目的とする.2021年度はPTSを用いて2011年東北地方太平洋沖地震の初期余効すべりの時空間発展を推定し,その結果に基づくプレート境界の摩擦特性の定量評価を試みた.
本年度はまず前年度に明らかにした課題であるプレート境界のすべり以外の変動源への対処として,Sidereal filterによるマルチパスノイズの除去を行った.その結果,数分以上の長周期側で断層すべり時系列のノイズレベルを最大30~50%程度低下させることに成功した.加えて確率過程の改良も行い,地震直後数十分の初期余効すべりの時空間発展を1秒間隔という極めて高い時間分解能で得た.
東北沖地震の初期余効すべりは本震の震源域の深い側に隣接する岩手県・宮城県周辺とその沖合に推定され,岩手県付近のすべりが宮城県付近よりも数分から10分程度早く立ち上がるなど,すべりの開始時刻の空間不均質が示された.加えて本震30分後付近を境にすべりが減速するなど,すべり速度の時間変化があった可能性が示された.これらは地殻変動研究で一般的に用いられる1日間隔の座標時系列では抽出が困難な特徴であり,本研究の結果は余効すべりの動態を議論する上で意義が大きい.さらに本震のすべりから期待される応力変化と初期余効すべりの速度を用い,速度状態依存の摩擦則における速度の効果のパラメータも推定した.その結果同パラメータに走向方向の不均質が示され,岩手県付近のプレート境界が宮城県付近よりも応力変化に対して敏感である可能性が示された.初期余効すべり時系列に基づく摩擦パラメータ推定はほとんど前例がない.本研究の成果は初期余効すべりの実態解明,そして地震発生サイクルにおける断層のすべり収支や摩擦特性の統一理解に貢献しうるものである.

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-19J20145
ID情報
  • 課題番号 : 19J20145
  • 体系的課題番号 : JP19J20145