共同研究・競争的資金等の研究課題

2019年4月 - 2021年3月

イブン・ハルドゥーン『実例の書』に関する総合的研究

日本学術振興会  科学研究費助成事業 特別研究員奨励費  特別研究員奨励費

課題番号
19J10119
体系的課題番号
JP19J10119
配分額
(総額)
900,000円
(直接経費)
900,000円
(間接経費)
0円

本研究課題は、14世紀の歴史家・思想家イブン・ハルドゥーンの主著である『実例の書』の分析を通じてその史料的性格を再検討することで、当該著作の歴史的意義を再検討するものである。
2019年度までは写本研究を中心に進め、『実例の書』のなかでも研究蓄積の少ない歴史叙述部分のテクスト検証を主軸に研究を進めてきた。しかしながらCOV-ID19の世界的流行に伴う各国のロックダウン、渡航制限等の要因により国外における写本調査の継続は困難となり、研究期間内に学術的成果として公表しうる水準には到達することは困難となったため、研究方針を一部変更することとした。本年度の主な研究内容は以下の通りである。
①前年度までの写本研究の成果等を暫定的にまとめた『或る中世写本の旅路―イブン・ハルドゥーン『イバルの書』写本の伝播(一四―一九世紀)』(仮題)を執筆した。(二〇二一年度刊行予定)
②『実例の書』を題材とした、アラビア語歴史書を史料研究の対象とする方法論の構築。文化的転回や構造主義、ヘイドン・ホワイト『メタヒストリー』の影響を受け、アラビア語歴史叙述の分析手法もまた大きく変化しているが、現状ではそうした試みは特定の時代や王朝史など、記述範囲を限定した歴史書が中心である。イブン・ハルドゥーンはその思想史上の重要性からみて、彼の歴史叙述に対しても十分な考察が加えられるべき人物であるが、人類の神話的起源から一四世紀までという広い時代をカヴァーする『実例の書』のような、「世界史」あるいは「普遍史」といわれる類型のアラビア語史書を包括的に分析する方法論は未だ確立していない。
以上を踏まえ、形式的・構造主義的分析と質的分析を組み合わせて歴史書の性格や内在する論理を考察する方法論を『実例の書』を事例として検討した。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-19J10119
ID情報
  • 課題番号 : 19J10119
  • 体系的課題番号 : JP19J10119