共同研究・競争的資金等の研究課題

2020年11月 - 2025年3月

アートに含まれる質感情報の情報学的解析

日本学術振興会  科学研究費助成事業 学術変革領域研究(A)  学術変革領域研究(A)

課題番号
20H05953
体系的課題番号
JP20H05953
配分額
(総額)
73,190,000円
(直接経費)
56,300,000円
(間接経費)
16,890,000円

本課題の目的は,美術品や工業製品において再現されている光学特性を解明し,我々が視覚を通して感じる質感と物体が有する光学特性、その光学特性を生む素材の組み合わせや製作工程との関係を明らかにすることである。本年度は肌質感で著名な藤田嗣治の油彩作品における質感表現の分析を進め、昨年度の成果である制作に用いられたことが想定される複数の白顔料の分光吸光および発光特性の基礎データに基づく顔料推定手法に顔料の空間分布並びにノイズ特性に関する拘束を取り入れることで頑健な手法に発展させた。美術館の協力のもと、代表者の佐藤、分担者の佐藤、平が美術品における質感表現の解明に取り組んだ。実作品を対象として分光反射率および蛍光特性の計測と解析を進め、関連する画家の色彩分布との比較により、藤田固有の肌質感表現への理解が深まった。また、美術品、工芸品、工業製品の特性解析に関しても進展があった。布や革,木目など複雑な質感をもつ物体は、その見た目をCGにより正確に再現することは容易ではない。これらの物体は、光の反射や透過に加え、表面下散乱、表面の凹凸による微細な影など、複雑な現象が複合しているためである。そこでこのような物体の再現方法として、双方向テクスチャ関数 (Bidirectional Texture Functions:BTF) が用いられる。しかし、この計測には長時間を要する上、データ量も膨大になるという問題がある。研究分担者の日浦らは、物体の反射特性に応じてサンプリング点の配置を適応的に制御することで必要な画像数を絞り,効率的にBTFを取得する手法を開発した。実験の結果、等間隔にサンプリングする場合と比較して最適配置を行ったものは質感の再現度が向上することがわかった。これに伴い、質感の再現度を保ったまま必要な撮影画像枚数を削減できる様になった。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PLANNED-20H05953
ID情報
  • 課題番号 : 20H05953
  • 体系的課題番号 : JP20H05953