2017年
現代高齢者福祉における「希望」の位置づけ:「ニーズ」をめぐる政策論および実践論との関係から
福祉社会学研究
- 巻
- 14
- 号
- 0
- 開始ページ
- 169
- 終了ページ
- 191
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- 研究論文(学術雑誌)
- DOI
- 10.11466/jws.14.0_169
- 出版者・発行元
- 福祉社会学会
<p>本稿の目的は,近年社会科学の分野で注目を集める「希望」の概念を社会福</p><p>祉領域に適用することが,「ニーズ」をめぐる議論に与える影響を探ることで</p><p>ある.本稿では特に,「ニーズ」や「デマンド」,「希望」に関する議論と,介</p><p>護保険制度導入前後の時期に出された行政文書から,高齢者福祉領域における</p><p>政策理念の転換を分析した.その結果,1990 年代前半まで「ニーズ」と「デ</p><p>マンド」の相違に関する議論が主流であったのが,2000 年前後からは,「ニー</p><p>ズ」と「希望」の関係への言及が増えていた.介護保険制度の導入に当たって</p><p>は,高齢者の「希望」に基づき「その人らしい生活」を送ることが,「尊厳の</p><p>保持」につながることが述べられ,それまでの「ニーズ」とは別の視点が現れ</p><p>ていた.</p><p> 「デマンド」に比べて「希望」は,自己決定の土台となる概念でもあり,介</p><p>護保険制度が掲げる「自立支援」や「尊厳の保持」と親和性の高いものである.</p><p>ミクロ実践の場では,「信頼関係構築」のためにも,「希望」の把握が欠かせな</p><p>い.一方で,本当に支援が必要な社会的マイノリティの存在を見逃さないため</p><p>にも,マクロ政策においては「希望」とは別の基準による議論が必要であり,</p><p>「社会的判断に基づくニーズ」を語ることがあくまで重要な意味を持つ.「希望」</p><p>の概念を導入することで,「ニーズ」が指し示す範囲は客観的ニーズとしての</p><p>あり方に収束し,その輪郭が明確になってくる.</p>
- リンク情報
- ID情報
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- DOI : 10.11466/jws.14.0_169
- ISSN : 1349-3337
- CiNii Articles ID : 130007665607
- CiNii Books ID : AA11962593