共同研究・競争的資金等の研究課題

2018年4月 - 2021年3月

資本所得税と世代間所得再配分の政治経済学

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(C)
  • 小野 哲生
  • ,
  • 内田 雄貴

課題番号
18K01650
配分額
(総額)
4,030,000円
(直接経費)
3,100,000円
(間接経費)
930,000円

2019年度は,2018年度に開発した理論モデルに公債発行を財源として追加した分析を行った.この拡張分析の概要を説明するにあたってまず,2018年に開発したモデルについて説明する.2018年の研究では,公教育支出とその財源としての労働所得税と資本所得税に注目し,これら政府支出と税が投票による政治的過程を通じて決定される状況を想定した.具体的には3世代で構成される世代重複モデルを用い,また,政策決定の政治過程を描写するために確率投票モデルを採用した.この枠組みの下で,少子高齢化による退職世代の政治力増大が,公教育支出水準や財源としての労働・資本所得税率の決定にどのような影響をもたらすか,また,政策の決定が経済成長や経済厚生に与える影響を分析したのが2018年度の研究である.
この研究では,毎期歳入と歳出がバランスする状況を想定していたが,実際は財源の一部が公債発行でまかなわれている.これは,公教育支出負担を将来世代に先送りする働きがあるため,少子高齢化による退職世代の政治力増大は,政府に公債発行による財源調達の誘因を与えることになる.このような政治的誘因が,経済成長を悪化させることを示した.また,この問題を解決するために,公債発行に対するシーリング(上限制約)の効果を検討した.分析の結果,シーリングの導入は経済成長率を高める効果があることが示された.
シーリングの導入は経済成長率の上昇を通じて将来世代の所得を増やし厚生を改善する効果があるが,一方で,現在世代は政策選択を制約されることで厚生が悪化する.したがって,経済厚生については,シーリングの導入によって世代間トレードオフが発生するためパレートの基準の観点からは望ましくないという結論を得た.

ID情報
  • 課題番号 : 18K01650