シスプラチンの腎毒性発現リスクはカルシウム拮抗薬(calcium channel blocker:以下、CCB)との併用によって増強されることが動物にて報告されているが、ヒトでの報告は少ない。今回、シスプラチン投与食道がん患者の腎機能に及ぼす降圧剤の影響を調査した。食道がん放射線化学療法施行患者のうち、降圧剤併用群42名、非併用群71名を調査対象とした。CCB併用群およびアンジオテンシンII受容体拮抗薬(angiotensin II receptor blocker:以下、ARB)あるいはアンジオテンシン変換酵素阻害薬(angiotensin-converting-enzyme inhibitor:以下、ACEI)併用群は非併用群と比べて急性腎障害(acute kidney injury:以下、AKI)の発現頻度が有意に高く(それぞれp=0.001、p=0.011)、またAKI発現時期はシスプラチン治療開始後7日目で最も高かった。シスプラチンと降圧剤の併用によって、AKI発現リスクが高まる可能性が示唆された。シスプラチン治療開始前にCCB、ARBおよびACEI以外の薬剤への変更を提案することが望まれるが、降圧剤使用継続の際は早期からの血液検査のモニタリングが必要と考える。(著者抄録)