2016年
硫黄・窒素沈着による森林生態系影響の全国評価 ―臨界負荷量を用いた推定―
日本森林学会大会発表データベース
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東アジアでの硫黄・窒素酸化物の排出は増え続け、沈着の空間分布も変化しているが、生態系に対する我が国のリスク評価マップは90年代以降ほとんど更新されていない。かつて生態系の酸性化リスクの評価手法として用いられた臨界負荷量(酸性化が生じる沈着の限界量)は現在の観測結果を必ずしも反映しておらず、富栄養化(窒素飽和)リスクへの対応も進んでいない。本研究は、近年の知見を反映した臨界負荷量マップの作成により、より現状に沿った全国評価を実施することを目的とした。入力値として塩基類の沈着、化学風化、降水に伴う溶脱、伐採による持ち出し等を全国の森林で推定し、硫黄・窒素沈着による土壌酸性化の臨界負荷量と、窒素沈着による富栄養化の臨界負荷量を算出した。これらを大気化学輸送モデルCMAQにより推定された硫黄・窒素沈着の全国分布と比較した。土壌酸性化の臨界負荷量は中部地方と関東西部で低い傾向がみられたものの、硫黄・窒素沈着が臨界負荷量を超える地点はなかった。一方、富栄養化の臨界負荷量は北海道で低く、一部で窒素沈着が臨界負荷量を上回っていた。今後、観測結果を活用した臨界負荷量モデルの調整や不確実性評価が必要である。