担当経験のある科目(授業)

2022年4月 - 現在

映画論B(※クリックでシラバス概要を表示)

共立女子大学

【授業の進め方の概要】

この授業では、ジャンル、監督、空間・身体表現といった様々な切り口から、映画の多様な特質について学習する。一本の映画作品を語ろうとするとき、その作品を成立させているや産業的な条件を無視することはできない。映画における産業的側面を色濃く反映しているのが、ジャンルというカテゴリーである。前期には、主にアメリカ映画を対象に、映画ジャンルについて考えるための基礎的な知識を学ぶ。さらに、個々の映画監督がジャンルとどのような関係を取り結んだかという考察を通じて、映画作品を多角的に捉えるための方法を学んでいく。後期には、前期に学んだ知見を踏まえて、古今東西の映画作品の画面や音を分析し、映画特有の空間や身体を生みだす様々な表現技法について学習する。当たり前のことのようだが、ほとんどの物語映画は「人間の身体」を中心に構成されている。映画特有の空間とともに描かれる身体の在りようは、美学的・歴史的・技術的な観点からみて、実に多様である。授業を通じて、そうした多様な空間・身体の在りようを読み解くための方法を学んでいく。

なお、特定の映画作品の視聴や、文献の熟読を課す場合がある。作品の視聴にあたっては、図書館やレンタルショップ、動画配信サイトなどを活用すること。それらの活用方法に関しては、授業内で詳しく説明する。なお、授業で紹介された作品や文献をはじめ、興味を持った作品や文献を自発的に視聴したり、読んだりする姿勢が望ましい。


【授業計画・内容】

第1回 【イントロダクション】

リアクションペーパーに、これまで自分が観たなかで好きな映画作品や、自分に影響を与えた映画作品・映画体験などについて簡単に書いてもらうので、過去を振り返って思い出しておくこと。映画をあまり観てこなかった人は、子供の頃に観た作品や、映画以外のメディア(美術、漫画、演劇、音楽、etc…)でも構わないので、自分の核となる芸術作品について思い巡らし、リアクションペーパーに書けるようにしておくこと。

この科目の到達目標、カリキュラムマップに記載のディプロマ・ポリシーとの対応関係、履修系統図を用いた当該科目の教育課程上の位置付けとその後の履修の流れを説明します。

授業の進め方や評価方法について説明します。加えて、映画を観るにあたっての基本的な知識や、映画作品へのアクセスの仕方などについても説明します。

授業内で指定した作品を鑑賞しておくこと。また、配布した資料を熟読しておくこと。



第2回 【古典的ハリウッド映画とジャンル】

「古典的ハリウッド映画」という様式概念/歴史概念について解説しつつ、映画ジャンルについて考えるための基礎的な知識について学習します。

授業内で指定した作品(古典的ハリウッド映画)を鑑賞しておくこと。また、配布した資料を熟読しておくこと。


第3回 【ロマンティック・コメディ】

ハワード・ホークス、プレストン・スタージェスといった名監督たちによるスクリューボール・コメディを中心に、ロマンティック・コメディ(恋愛喜劇)について学習します。

授業内で指定した作品(ホークスやスタージェスの作品)を鑑賞しておくこと。また、配布した資料を熟読しておくこと。


第4回 【西部劇①】

ジョン・フォード、ハワード・ホークスなどの古典的な西部劇から、バット・ベティカー、アンソニー・マン、ニコラス・レイなどの50年代西部劇までを紹介し、西部劇を面白く見るためのポイントを学習します。

授業内で指定した作品(フォードやマンの作品)を鑑賞しておくこと。また、配布した資料を熟読しておくこと。


第5回 【西部劇②】

サム・ペキンパーやセルジオ・レオーネによる60年代末の西部劇について解説します。また、クリント・イーストウッドをはじめとする70年代以後の西部劇についても学習します。

授業内で指定した作品(ペキンパーやイーストウッドの作品)を鑑賞しておくこと。また、配布した資料を熟読しておくこと。


第6回 【メロドラマ①】

ジャンルとしてメロドラマを考えるにあたっての重要なポイントを解説し、サイレント期のD・W・グリフィスや古典期のキング・ヴィダーの作品、あるいは現代作品を例にメロドラマの様式や歴史について学習します。

授業内で指定した作品(グリフィスやヴィダーの作品)を鑑賞しておくこと。また、配布した資料を熟読しておくこと。

第7回 【メロドラマ②】

50年代のダグラス・サークやヴィンセント・ミネリ、ニコラス・レイの作品を通じて、メロドラマについてさらに理解を深めます。

授業内で指定した作品(サークやレイの作品)を鑑賞しておくこと。また、配布した資料を熟読しておくこと。


第8回 【サスペンス①】

アルフレッド・ヒッチコックの作品を取り上げ、その歴史的・美学的な意義について解説しつつ、サスペンス映画の面白さを学習します。

授業内で指定した作品(ヒッチコックの作品)を鑑賞しておくこと。また、配布した資料を熟読しておくこと。

第9回 【サスペンス②】

クロード・シャブロルやブライアン・デ・パルマ等、ヒッチコック以後のサスペンス映画について理解を深めます。

授業内で指定した作品(シャブロルやデ・パルマの作品)を鑑賞しておくこと。また、配布した資料を熟読しておくこと。


第10回 【ミュージカル】

30年代から50年代にいたる古典的なミュージカルを、ヴィンセント・ミネリ作品を中心に紹介し、楽しむポイントを学習します。

授業内で指定した作品(ミネリの作品など)を鑑賞しておくこと。また、配布した資料を熟読しておくこと。


第11回 【戦争映画】

ハワード・ホークスによる航空映画を中心に、古典期における戦争映画について解説します。また、現代において戦争映画を捉えるにあたってのポイントも学習します。

授業内で指定した作品(ホークスの作品など)を鑑賞しておくこと。また、配布した資料を熟読しておくこと。


第12回 【ヤクザ映画】

アメリカ映画におけるジャンルの独自性を深く理解するためには、日本で発達したジャンルの理解も欠かせない。この回では、日本の60~70年代に流行したヤクザ映画について学習する。マキノ雅弘や加藤泰による60年代の任侠映画から、深作欣二や中島貞夫による70年代の実録路線に至るヤクザ映画の意義について理解を深める。

授業内で指定した作品(任侠映画、実録映画)を鑑賞しておくこと。また、配布した資料を熟読しておくこと。


第13回 【ロード・ムーヴィー①】

60年代末〜70年代におけるニュー・ハリウッドのロード・ムーヴィーについて学習する。デニス・ホッパーやアーサー・ペン、モンテ・ヘルマンらの作品について理解を深める。

授業内で指定した作品(ホッパーやペンの作品)を鑑賞しておくこと。また、配布した資料を熟読しておくこと。
次回、前期のまとめのレポートを提出してもらいます。


第14回 【ロード・ムーヴィー②】

ヴィム・ヴェンダースやアッバス・キアロスタミなど、アメリカ映画にとどまらないロード・ムーヴィーの射程について理解を深める。
前期レポートを提出してもらいます。

授業内で指定した作品(ヴェンダースやキアロスタミの作品)を鑑賞しておくこと。また、配布した資料を熟読しておくこと。


第15回 【運動をいかに表現するか】

後期は、映画における空間・身体表現について学習していく。まずは導入として、映画における「運動」を考えるためのポイントについて解説する。

授業内で指定した作品(バスター・キートンの作品など)を鑑賞しておくこと。また、配布した資料を熟読しておくこと。


第16回 【顔とは何か】

映画における「顔(クロースアップ)」の意義について多角的に考察する。D・W・グリフィス、セルゲイ・エイゼンシュテインなどによる古典的な名作をはじめ、ジャン=リュック・ゴダール、アッバス・キアロスタミ、デヴィッド・リンチなどの作品について理解を深めます。

授業内で指定した作品(ゴダールやリンチの作品)を鑑賞しておくこと。また、配布した資料を熟読しておくこと。


第17回 【視線とアクション①】

映画における「視線とアクション」の演出を分析する。成瀬巳喜男やウィリアム・A・ウェルマンを中心に、活劇的編集に基づく視線劇の効果について学習する。

授業内で指定した作品(成瀬やウェルマンの作品)を鑑賞しておくこと。また、配布した資料を熟読しておくこと。


第18回 【視線とアクション②】

トニー・スコット作品を中心に、現代映画における「視線とアクション」の演出について理解を深める。

授業内で指定した作品(スコットの作品など)を鑑賞しておくこと。また、配布した資料を熟読しておくこと。


第19回 【距離と高低差①】

キング・ヴィダーやアンソニー・マンの作品を中心に、距離と高低差を活かした空間設計、撮影・編集技術について学習する。

授業内で指定した作品(ヴィダーやマンの作品)を鑑賞しておくこと。また、配布した資料を熟読しておくこと。


第20回 【距離と高低差②】

加藤泰やリチャード・フライシャーの作品を中心に、距離と高低差を活かした空間の表現について理解を深める。

授業内で指定した作品(加藤やフライシャーの作品)を鑑賞しておくこと。また、配布した資料を熟読しておくこと。


第21回 【音、声、画面外①】

ロベール・ブレッソンやホセ・ルイス・ゲリン、ケリー・ライカートの作品を中心に、映画における音、とりわけ物音の効果について学習する。

授業内で指定した作品(ブレッソンやライカートの作品)を鑑賞しておくこと。また、配布した資料を熟読しておくこと。


第22回 【音、声、画面外②】

トーキー初期のユニヴァーサル・ホラー、フリッツ・ラング、アルフレッド・ヒッチコックの作品を中心に、映像と音の分裂的な関係について理解を深める。

授業内で指定した作品(ラングやヒッチコックの作品)を鑑賞しておくこと。また、配布した資料を熟読しておくこと。


第23回 【連続性と断片化①】

カール・Th・ドライヤー、溝口健二、神代辰巳、相米慎二の作品を中心に、カメラの動線およびフレーミングと俳優の身体との緊張関係が大きな意味をもつ、ロングテイク(長回し)を活用した演出を分析する。

授業内で指定した作品(ドライヤーや溝口の作品)を鑑賞しておくこと。また、配布した資料を熟読しておくこと。


第24回 【連続性と断片化②】

ジョン・カサヴェテスの作品を取り上げ、生々しい感触を残す作品における、複雑な撮影・編集技法や、独特の俳優演出について解説する。

授業内で指定した作品(カサヴェテスの作品など)を鑑賞しておくこと。また、配布した資料を熟読しておくこと。


第25回 【モノの質感】

モンテ・ヘルマン、フランシス・フォード・コッポラ、スティーヴン・スピルバーグなどの作品を中心に、即物的な音響や、モノの質感をとらえるショットの設計について考察する。

授業内で指定した作品(コッポラやスピルバーグの作品)を鑑賞しておくこと。また、配布した資料を熟読しておくこと。


第26回 【マテリアルと亡霊】

黒沢清やクリント・イーストウッドなど、映画の中に存在することを自己反省的に主題化する作品について、フィルムというマテリアルの観点から考察する。

授業内で指定した作品(黒沢やイーストウッドの作品)を鑑賞しておくこと。また、配布した資料を熟読しておくこと。


第27回 【特撮からCGへ】

ジョン・カーペンター、ジェームズ・キャメロン、サム・ライミの作品を中心に、80年代特撮からCGへと至る、怪物の身体表象について考察する。

授業内で指定した作品(カーペンターやライミの作品)を鑑賞しておくこと。また、配布した資料を熟読しておくこと。
次回、最終レポートを提出してもらいます。


第28回 【まとめ】

最終レポートを提出してもらう。授業の全体を総括する。

授業内で指定した作品を鑑賞しておくこと。