共同研究・競争的資金等の研究課題

2020年4月 - 2023年3月

文化による都市再生とその社会的効果ー旧産炭地の国際比較研究

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(C)  基盤研究(C)

課題番号
20K02112
体系的課題番号
JP20K02112
配分額
(総額)
2,600,000円
(直接経費)
2,000,000円
(間接経費)
600,000円

本研究のテーマは「文化による都市再生とその社会的効果ー旧産炭地の国際比較研究」である。予定していた海外・国内のフィールド調査がコロナ渦によりほとんどできなかったため、文献調査を中心に進めた。文化による都市再生を考えるうえで本研究が重視するのは、「コモンズ/公共財としての文化遺産」という視点である。この考え方の歴史的な成立・展開過程を、フランス・イギリス・日本の三カ国および国際条約を対象に調べた。以下、明らかになったことを記す。
フランスでは、革命期に相次いだ文化財破壊に対し、グレゴワール神父がそれを「ヴァンダリズム」と呼んで非難し、「みんなの財産」である文化財保存を訴えた。その後、ユゴーらがこの視点から文化財保存の世論喚起を試みるが、私有財産権という近代国家の基本原則との抵触が文化財制度を確立するうえで大きな障壁となっていた。イギリスでは、19世紀にラスキンやモリスら文人が文化財保存を主張・推進し、文化財が過去世代と未来世代も含めてみんなのものであるという論理を展開した。日本では明治期から戦前までの文化財保存のなかで、「みんなの財産」という視点が明示的に語られることは稀だったが、敗戦後に捻じれた形で現れた。戦後賠償の一環として文化財接収が中国やフィリピン、オランダから要求されたとき、日本国内の世論から賛成論が少なからず起こった。その理由の一つに、それまで文化財が特権階級の私有物のように扱われて一般国民から乖離し、「みんなの財産」になっていないことが挙げられた。国際条約に関しては、ハーグ陸戦条約で戦争の破壊から文化財を保護することがうたわれたとき、文化財は私有財産という位置づけだったが、第二次大戦後、1954年ハーグ条約や文化財の不法輸出入等禁止条約、世界遺産条約などのなかで、「全人類の文化遺産」や「共通の遺産」といった概念がたびたび用いられるようになった。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-20K02112
ID情報
  • 課題番号 : 20K02112
  • 体系的課題番号 : JP20K02112