共同研究・競争的資金等の研究課題

2016年4月 - 2020年3月

メカノセンサー欠損によるエナメル質形成不全

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(C)  基盤研究(C)

課題番号
16K11447
配分額
(総額)
4,680,000円
(直接経費)
3,600,000円
(間接経費)
1,080,000円

歯科臨床では、多様なエナメル質形成不全に遭遇するが、その機構は未だ明らかとは言えない。私たちは口腔上皮に高発現している温度感受性TRPV3およびエナメル芽細胞に存在するメカノセンサーであるTRPV4(transient receptor potential vanilloid 3,4)チャネルがエナメル質の形成調節に関与するとの仮説を立て、野生型(WT)とTRPチャネル遺伝子欠損マウス(V3KO、V4KO)を用いて、エナメル質形成への影響を調べた。その結果、WTに比べてV3KO、V4KOマウスは歯のエナメル質石灰化が不十分であることを見いだした。その機序を調べるため、V3KOおよびV4KOがマウス歯エナメル芽細胞におけるエナメルタンパクの発現および歯エナメル質のカルシウム、リン、マグネシウム分布に及ぼす影響について検討した。
我々は生後21日齢のWTおよびV3KO、V4KOマウスの切歯、臼歯を用いて、アメロゲニン(AMEL)、アメロブラスチン(AMBN)、エナメリン(ENAM)抗体による免疫染色を行った。また、エナメル質のミネラル分布状況についてX線マイクロアナライザー(EPMA)を用いて解析を行った。
その結果、WTおよびV3KO、V4KOマウスの歯はいずれもエナメルタンパクの免疫陽性反応が確認された。WTマウスに比べてV3KO、V4KOマウスのアメロブラスチン発現が弱い傾向が示した。一方、EPMA解析では、WTと比較してV3KOマウスは、臼歯および切歯エナメル質のカルシウム、リン、マグネシウム濃度が有意に低下した。V4KOマウスにおいても同様な結果が得られた。これらのことから、TRPチャネルはエナメル質形成に影響を与える可能性が示唆された。今後はさらにMicro CTによるエナメル質形成密度の解析やEDXによるカルシウム、リン、マグネシウムの元素分析を進めていく予定である。

ID情報
  • 課題番号 : 16K11447