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2017/01/11

「新元号の制定」を考える際に注意すべき点は何か

Tweet ThisSend to Facebook | by suzumura

報道によれば、政府は今上陛下の退位に伴う皇位継承の時期について、2019年1月1日を念頭に制度設計する検討に入り、皇太子殿下の即位に備えて新たな元号の検討にも着手しました1


今上陛下の退位については政府が天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議を設けて議論を行ってはいるものの、未だ与野党間の協議が始まっておらず、特例法で対処するのか皇室典範の改正によるのかという法制度の点でも統一された見解が見出されていない段階で皇位継承の時期や改元の検討を始めたことは、先憂後楽的な周到さの現われではなく、前のめりと称されうる態度であるといえるでしょう2


しかも、昨年8月8日(月)に今上陛下が退位を公式に言及した際、「戦後70年という大きな節目を過ぎ、2年後には、平成30年を迎えます」と発言されたこと3について、安倍晋三首相の周辺に「その年までの在位を節目ととらえておられることは明白だ」とする声があるものの1、この一文は「戦後70年という節目の次には平成という時代も30年目という節目を迎える」という事実を述べているのみですから、「その年までの在位を節目ととらえておられることは明白だ」と考えることは蓋然的ではあっても必然性はなく、「首相周辺」の理解は曲解のそしりを免れ得ないでしょう。


一方、退位にせよ崩御にせよ、いずれは改元のときが訪れます。その意味で、われわれは元号を選定する手続きについても顧慮する必要があるでしょう。


1979年6月12日に元号法を公布した大平正芳内閣は、10月23日の閣議において元号法に基づき改元の手続きを定めた総理府の要綱「元号選定の手続きについて」を了承しました。その後軽微な変更を経た「元号選定の手続き」が定める望ましい元号の条件の概要は以下の通りです4


  1. 国民の理想にふさわしい、よい意味を持つもこと。
  2. 常用漢字2文字であること。
  3. 書きやすいこと。
  4. 読みやすいこと。
  5. これまでに元号または送り仮名として用いられていないこと。
  6. 俗用されているものではないこと。


こうした条件に従って新しい元号の候補が選定され、最終的に1989年1月7日(土)に平成の元号が定められたのは周知の通りです。


なお、昭和天皇の崩御の直後に召集された「元号に関する懇談会」には、池田芳蔵、久保亮五、小林与三次、中川順、中村元、西原春夫、縫田曄子、森亘の8氏が参加しました5。内訳は、公共放送(池田)、民放(中川)、新聞(小林)、国私大学(森、西原)、有識者(久保、中村、縫田)、となります。


もし、新しい元号を、天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議ではなく「元号に関する懇談会」に類する機関において、前回と同じ母体から選出された委員によって決定するなら、構成員は籾井勝人(公共放送)、白石興二郎(日本新聞協会)、井上弘(日本民間放送連盟)の各氏が参加することになるでしょう。


また、有識者については、先例に従えば漢籍に通暁する東洋学者と理科系の文化勲章受勲者に国立女性教育会館などの女性関連組織の代表者、となるでしょう。しかし、女性については「女性活躍」という政府の意向を反映し、複数名が起用される可能性が高いと思われます。


いずれにせよ、日常生活の中で西暦の使用が一般化したとはいえ、依然として時代の雰囲気を決定するほどの影響力を有する元号だけに、政府や有識者などの関係者には、慎重で入念な検討が望まれるところです。


1 皇位継承、19年元日に. 日本経済新聞, 2017年1月11日朝刊1面.
2 政界における「前のめり」の持つ意味については、以下の文献が参考になる。伊奈久喜, 「前のめり」論の深層心理. 日本経済新聞, 2006年10月29日朝刊2面.
3 象徴としてのお務めについての天皇陛下のおことば. 宮内庁, 2016年8月8日, http://www.kunaicho.go.jp/page/okotoba/detail/12#41 (2017年1月11日閲覧).
4 所功, 元号の歴史. 増補版, 雄山閣, 1996, 196-197.なお、「元号選定の手続きについて」の原本は国立公文書館の公式ウェブサイトで閲覧できる。元号選定手続について. 国立公文書館, 公開日不詳, https://www.digital.archives.go.jp/das/image/M0000000000001159113 (2017年1月11日閲覧).
5 元号懇談会メンバー、池田NHK会長ら. 日本経済新聞, 1989年1月7日夕刊2面.


<Executive Summary>
What Are Important Points to Decide New Gengo? (Yusuke Suzumura)


It is reported that the Japanese Government plans the date of the enthronement of Crown Prince Naruhito on 1st January 2019 and apply new gengo, Japanese era name. On this occasion we examine important points to decide new gengo.


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