2017年4月 - 2021年3月
歯周病細菌が産生するプロテアーゼによる歯周組織破壊機構の解明
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
本研究の目的は,「歯周病菌と宿主細胞間で起こる感染現象を細胞・分子生物学的アプローチにより,歯周病の発症機序および歯周病関連疾患の増悪への関与を解明する」ことである。これまでに申請者らは、歯周病菌Porphyromonas gingivalis (Pg)による宿主細胞に影響を与え、細胞内シグナル伝達経路の撹乱による歯周組織の炎症とその破壊に関連する分枝解析を行なってきた。歯周病の発症におけるジンジパイン(Gps)の役割を調べるために、Gps完全欠損株とその野生株を用いた感染実験による比較解析を行ない、歯周炎でみられる炎症性メディエーターであるCOX-2発現やPGE2産生へのGpsの重要性を明らかにした。さらに我々の研究結果から、本菌が産生するGpsは、他の病原因子であるLPSや線毛よりも強くCOX-2発現やPGE2産生を誘導することがわかった。GpsによるCOX-2発現の細胞内応答経路を調べたところ、ERK/AP-1(c-Jun/c-Fos)およびIKK/NF-kBp65の2つのシグナル伝達経路と転写因子の活性化が重要であることを示した。2019年度の研究では、GpsによるCOX-2発現につながる上流因子の分子解析を行なった。Pg野生株の感染における各種カルシウムイオンの挙動に関わる阻害剤・アンタゴニストを用いて、COX-2発現に関与するカルシウムの供給経路について調べた。その結果、COX-2の発現にはセカンドメッセンジャーである細胞内カルシウムが極めて重要であり、カルシウムの細胞質内への供給は細胞内貯蔵からの供給ではなく、細胞外からの流入であることが示唆された。2020年度の研究計画では、細胞外からのカルシウムイオンの流入に関わるチャネルや膜タンパク質を解析し、Gpsが作用する細胞表面のターゲットタンパク質とCOX-2発現との関連性について明らかにしていく。
- ID情報
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- 課題番号 : 17K11668
- 体系的課題番号 : JP17K11668
この研究課題の成果一覧
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論文
1-
Journal of immunology (Baltimore, Md. : 1950) 208(5) 1146-1154 2022年3月1日 査読有り筆頭著者
書籍等出版物
4-
株式会社北隆館 2019年1月25日
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株式会社北隆館 2018年9月25日
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ニューサイエンス社 2018年8月22日
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株式会社北隆館 2018年6月