2021年4月 - 2023年3月
確率論的津波浸水ハザード評価の効率化とその検証
文部科学省 科学研究費助成事業 若手研究 若手研究
本研究では、津波数値解析結果を効率的に利用した津波浸水深の発生確率分布の評価手法の構築を目的としている。2021年度は、固有直交分解(POD)から得られる特異値分解(SVD)の手法を用いて、多数の津波浸水深分布を空間モードに分解して、代理モデルを構築することで浸水深分布をランダムに生成し、さらに、地震動の切迫性を考慮した確率論的津波浸水深評価の手法を提案した。具体的にはまず、相模トラフ巨大地震による鎌倉市の津波浸水を対象として、地震の深さ、すべり分布、モーメントマグニチュードの3つの変数の変動を考慮して、計27ケースの津波数値計算を行い、津波浸水深を空間モードに分解し、空間モードの線形結合として得られる代理モデルを構築した。次に、代理モデル内のパラメータを前述の3つの変数を用いたガウス過程回帰(GRP)により決定し、モンテカルロシミュレーションを実行することで、比較的少数の津波数値解析から疑似的な浸水深分布を多数生成することができた。さらに、地震の発生確率としてBPT分布を用いることで、地震発生の切迫性を考慮し、今後50年以内に39%・10%・5%・2%で発生する陸域の津波浸水深分布を評価することが可能であることを示した。代理モデルを検証するため、提案した代理モデルにより生成したサンプルと、物理モデル(非線形長波方程式)による計算結果を比較したところ、良い一致を示した。また、今後50年という比較的短期な期間に焦点を当てた確率論的津波浸水評価を実施したことで、各種構造物の耐用年数、人間の世代や寿命を考えた津波ハザード評価手法として利用されることが期待できる。
- ID情報
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- 課題番号 : 21K14391
- 体系的課題番号 : JP21K14391
この研究課題の成果一覧
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論文
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Stochastic Environmental Research and Risk Assessment 37 2053-2068 2023年2月 査読有り筆頭著者
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Journal of Geophysical Research: Oceans e2021JC017250(7) 2021年6月15日 査読有り筆頭著者
MISC
1-
関東学院大学理工学部教養学会 科学/人間 52 195-205 2023年3月 筆頭著者