Mar, 2009
文学と文学ならざるもの――挿絵に見る近代文学の変容
表象
- Volume
- Number
- 3
- First page
- 64
- Last page
- 73
- Language
- Japanese
- Publishing type
- Research paper (bulletin of university, research institution)
- Publisher
- 表象文化論学会
表象文化論学会の学会誌「表象」の特集「文学の〈メタモルフォーゼ〉」のために寄稿した論文。19世紀フランス文学における「編集者」の成立に挿絵が果たした役割を概観し、編集者と著者の相補的な誕生に根拠を持つ「著作権」によって「文学場」が自律性を獲得したこと、しかし、その自律性獲得の過程で挿絵が抑圧されていった経緯を概観した。近代文学は、その成立に当たって挿絵という文学ならざるものと対峙していた事実があり、自律性の獲得はそれを忘れさせ、単なる既得権として制度化される危険に陥る。「著作権」およびそれに基づく近代文学は今まさにそうした危機に陥っており、文学のメタモルフォーゼは「他なるもの」との緊張関係をなんらかの形で回復する以外にありえない。