2004年3月
市場化する社会における子どもと学校空間の変容(<特集>「個人化」と社会の変容)
『社会学評論』
- 巻
- 54
- 号
- 4
- 開始ページ
- 386
- 終了ページ
- 400
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- DOI
- 10.4057/jsr.54.386
- 出版者・発行元
- 日本社会学会
本稿は, 個人化の進行のなかで学校の意味がどのように変化してきたのかを, 学校の「現実」を意味づける枠組みの変化と重ね合わせながらたどりなおし, 現在の学校を特徴づける個人化の進行の意味を再考しようとする試みである.<BR>1970年代後半以降は, 学校がその存立を根拠づける意味の基盤を喪失して, 虚構性があらわになっていく過程であったが, それは教育における個人化が内包する矛盾が顕在化する過程でもあった.学校と教育の正当性への懐疑とそれにともなう学校/教育批判は, 社会化装置としての学校とそれを支えてきた共通の意味の基盤としての学校の弱体化を促進したが, それと同時に顕著になった個人の虚構化は, 「個性化」と「多様化」を軸とする一連の教育改革のなかで, 学校と個人の市場化へと展開している.そこでは, 学校は共通の社会化の場としての共有された意味空間から, 用意された選択肢のなかから手軽な選択を繰り返すひとつの場として, 市場化のなかに包摂されていく.<BR>学校の存立を支えてきた基盤がさまざまなレベルで変容し, 学校が共通の意味を提供しうる場としての位置を喪失しつつあるなかで, このような市場化への包摂に柔軟に対応しうる自己社会化の場としての教育空間の創出の可能性を探ることが重要な課題になっている.
- リンク情報
- ID情報
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- DOI : 10.4057/jsr.54.386
- ISSN : 0021-5414
- CiNii Articles ID : 110000226739
- CiNii Books ID : AN00109823