論文

2016年

X-MP情報を用いたゲリラ豪雨タマゴの渦管構造解析Ⅱ

水文・水資源学会研究発表会要旨集
  • 佐藤 悠人
  • ,
  • 中北 英一
  • ,
  • 山口 弘誠

29
開始ページ
15
終了ページ
15
記述言語
日本語
掲載種別
DOI
10.11520/jshwr.29.0_15
出版者・発行元
水文・水資源学会

2008年神戸市都賀川で豪雨による突然の出水により5名の方がなくなるという悲惨な事故が起こった.河川付近にいる人々をゲリラ豪雨から安全に避難させるため,わずか数分でも早いゲリラ豪雨の予測技術の確立,高精度化がより一層急務であると言える.中北らはゲリラ豪雨に発達するタマゴ内部に高い渦度が見られることを発見し,渦度がゲリラ豪雨の危険性予測に極めて有効な指標であることを示しゲリラ豪雨の予報システムを開発した.しかしなぜ高い渦度を持つ積乱雲が発達するかというメカニズムについては未だに明らかでない点が多く,メカニズムの解明が重要である.そこで本研究では渦度とタマゴ発生・発達の理論的背景を解明するために積乱雲初期の渦度分布構造を詳細に解析し,新たな知見を得ることを目的とした.中北らはゲリラ豪雨のタマゴが鉛直渦管構造を持っていることを発見し,これはスーパーセル発達過程初期に見られる渦管構造と類似していることを示した.これによりスーパーセル初期の渦管の発達を表現する流体力学の理論を用いて上昇流の位置を推定できると考えられる.そこで本研究では観測されたレーダー反射因子差ZDRを用いて上昇流の位置を推定し,理論から導かれる上昇流の位置と一致するか検証を行った.鉛直渦度方程式から上昇流の両脇で正負の渦度が形成されることがわかっており,上昇流がゲリラ豪雨の事例で確認できるかZDRを用いて検証した.融解層以上のZDRに注目したところ,HighZDR Columnが確認された.これにより本事例に上昇流が存在しているということがわかりHigh ZDR Columnの位置と理論から推定される上昇流の位置を比較したところ,上昇流と渦度が対応していると考られるという結果を得た.しかし下層に雨粒がなければ上昇流があってもHigh ZDR Columnが見られないこと,強い上昇流の位置を正確に知ることができないことからより詳細な上昇流解析を行うためには実際に鉛直風速を算出する必要がある.そこで清水らの手法を用いたTriple Doppler手法から鉛直風速を算出した.ペアーの渦管の間には周囲と比較しても強い上昇流が存在しており,ZDRによる上昇流部推定の結果と矛盾しないことがわかった.

リンク情報
DOI
https://doi.org/10.11520/jshwr.29.0_15
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/130005176113
ID情報
  • DOI : 10.11520/jshwr.29.0_15
  • CiNii Articles ID : 130005176113

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