共同研究・競争的資金等の研究課題

2012年 - 2013年

植物における硫酸転移酵素の生理機能に関する研究

日本学術振興会  科学研究費助成事業 特別研究員奨励費  特別研究員奨励費

課題番号
12J01404
配分額
(総額)
1,800,000円
(直接経費)
1,800,000円

フラボノイドの硫酸体は約250の植物種で発見されているが、これまでのところその生理機能は全く明らかにされていない。そこで、代謝工学的手法による食品成分硫酸体の大量合成法を用いて、フラボノイド硫酸体を合成し、その生理機能の検討を行った。SULTIA3を発現する大腸菌BL21にナリンゲニンを処理し、培地をダイヤイオンで精製した後、ナリンゲニン-7-sulfateを得た。合成したナリンゲニン硫酸体をシロイヌナズナ培養細胞T87へ処理し、その後蛍光ディファレンシャルニ次元電気泳動を行うことでプロテオーム解析を行った。ナリンゲニン処理区とナリンゲニン硫酸体処理区間において発現量に差異のあったタンパク質について質量分析計を用いてタンパク質の同定を行ったところ、発生過程、解糖系、アミノ酸代謝に関わるタンパク質が同定された。このことから、フラボノイドは硫酸化されることで、これらのタンパク質が関わる生理機能に影響を与えることが示唆された。次に植物体レベルでのフラボノイド硫酸体の生理機能について評価するため、ナリンゲニンあるいはその硫酸体を含有する培地に播種し、発生過程についてフェノタイプの観察を行った。その結果、ナリンゲニン処理区では、著しい主根の伸長抑制効果を示したが、ナリンゲニン硫酸体処理区ではその効果がキャンセルされていた。しかしながら、ナリンゲニン硫酸体処理区では根毛の異常な増加がみられ、ナリンゲニン処理区ではその効果は確認できなかった。以上のことから、ナリンゲニン硫酸体は根に対してアグリコンとは異なった生理活性を示し、表皮細胞の根毛への分化を促進している可能性が示唆された。本研究によりフラボノイド硫酸体がフラボノイドとは異なる生理機能をもつことが明らかとなった。

ID情報
  • 課題番号 : 12J01404