論文

2016年

運動課題の違いがpassive stiffnessの変化に及ぼす影響

理学療法学Supplement
  • 寺田 茂
  • ,
  • 早川 省三
  • ,
  • 宮田 伸吾
  • ,
  • 松井 伸公
  • ,
  • 内山 圭太
  • ,
  • 北川 孝

2015
開始ページ
734
終了ページ
734
記述言語
日本語
掲載種別
DOI
10.14900/cjpt.2015.0734
出版者・発行元
公益社団法人 日本理学療法士協会

【はじめに,目的】臨床において,joint stiffnessの変化は様々な影響を及ぼす。関節拘縮や痙縮を有する場合はjoint stiffnessが増大しており,逆にjoint stiffnessの低下はスポーツ分野ではエネルギー損失を増大させる結果,力の伝達効率が悪化しパフォーマンスを低下させる。したがってjoint stiffnessの状態を把握し,その変化を知ることはリハビリテーションにおける治療方針の決定や効果判定を行う際に重要である。joint stiffnessはpassive stiffnessとdynamic stiffnessとに分類され,passive stiffnessは運動履歴によって変化することが知られている。passive stiffnessを規定する因子は筋,腱,結合組織など多岐にわたり,その中でどの要因が影響しているのかは判別が困難である。そこで今回,等速性他動運動および等尺性筋収縮がpassive stiffnessに与える影響を推定筋量率の違いから検討した。【方法】対象は健常男性20名であった。被験者の身体的特性として身長,体重,体脂肪率を測定し推定筋量率を算出,平均値を基準として2群(低値群:A群,高値群:B群)に分け比較した。passive stiffnessの指標としてpendulum test(PDT)時の下腿自由落下角加速度を用いた。2つの加速度計を貼付したプラスチック製の板を被験者の下腿に装着し,等速性他動運動課題と大腿四頭筋(Q),ハムストリングス(H)の最大等尺性収縮課題を行った。それぞれの課題前後で,PDT時の下腿自由落下角加速度を計測し,角加速度増加率(課題後/課題前×100)を算出し検討した。統計分析はSPSS Ver.11を使用して対応のないt testを用いた。【結果】等速性他動運動後の角加速度増加率は,A群108.7±17.9%,B群114.4±27.1%,Q課題でA群は91.9±13.5%,B群78.4±12.3%,H課題でA群99.2±16.3%,B群107.4±20.2%となり,Q課題のB群において有意に低値を示した(P<0.05)。【結論】PDT時,下腿の振り子運動状減衰振動は下腿部にかかる重力,膝関節の粘弾性,QとHの伸張反射により影響を受ける。従って角加速度増加率が100%以上では膝関節の運動抵抗は減少し,逆に100%以下の場合は増大したと捉えることが出来る。本研究ではQ課題後にB群で有意に角加速度増加率が低値を示した。この結果から筋量率が高い方が大腿四頭筋の筋収縮後に運動抵抗の増大を生じることが示唆された。また,等速性他動運動において角加速度増加率は100%以上となり,運動抵抗が減少する傾向を示したが,筋量率による差は有意なものではなかった。これは,下腿自由落下時の減衰振動は下腿の形状や長さ,重量などの影響を受ける。しかし今回は身体の形態的な個体差は考慮しておらず,また被験者は比較的筋量率の高いものが多く,下肢の局所筋量を指標としていなかったことも一因である考えられた。近年PDTにおける個人差軽減のモデルが考案されており,今後は補正を加えた上,幅広い対象で局所筋量を反映したデータによる検討が必要であると思われる。

リンク情報
DOI
https://doi.org/10.14900/cjpt.2015.0734
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/130005417809
ID情報
  • DOI : 10.14900/cjpt.2015.0734
  • CiNii Articles ID : 130005417809

エクスポート
BibTeX RIS