May, 2019
月経痛からみた婦人科良性疾患の漢方医学的特徴
産婦人科漢方研究のあゆみ
- Volume
- Number
- 36
- First page
- 54
- Last page
- 60
- Language
- Japanese
- Publishing type
- Publisher
- 産婦人科漢方研究会
【目的】チョコレート嚢胞は血の異常をベースとして、月経痛の重症度と冷えの頻度は逆相関になることを報告してきた。子宮腺筋症(A群)、チョコレート嚢胞(C群)と子宮筋腫(M群)の月経痛の詳細を漢方医学的に検討した。【方法】当科で経験したA群28例、C群84例、M群52例である。月経痛の程度を、なし、軽度(鎮痛剤が不要)、中等度(鎮痛剤が必要だが日常生活に支障なし)、重度(鎮痛剤が必要で日常生活に支障が有り)と定義し、三群間で比較した。原則として、治療前と治療後1ヵ月、3ヵ月と6ヵ月後に、問診・切診・腹診の所見を記録した。【成績】各疾患群間で患者背景に差は無かった。月経痛が重度の割合はA:57.1%、C:51.8%、M:36.5%とMが低く、月経痛の程度が月経周期間で異なる割合は、A:0%、C:81.0%、M:5.7%とCで高かった。Aをびまん型(5例)局在型(19例)粘膜下型(4例)に分けると、重度月経痛の割合が20.0%、68.4%、25.0%で、局在型で高かった。Mを漿膜下(5例)筋層内(18例)粘膜下(29例)に分けると、重度月経痛の割合が20.0%、16:7%、51.7%と粘膜下で高く、1〜2ヵ月で急激に月経痛が悪化した例は粘膜下の23例(79.3%)だけにみられた。子宮腺筋症は熱が、チョコレート嚢胞は冷えが、月経痛の重症度と密接に関係していた。筋層内筋腫と粘膜下筋腫では、月経痛が重度な症例に実証が多く、筋層内筋腫で実証の率が高く、粘膜下筋腫では冷えがやや高い傾向がみられた。治療後は、実証が多くなり、気(特に粘膜下筋腫)と血の異常が改善され、冷えが少なくなる特徴があった。【結論】今回の研究で、漢方医学的には良性疾患によりそれぞれの特徴を持ち、西洋学的治療も漢方医学的所見の改善をすることが明らかになった。(著者抄録)
- ID information
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- ISSN : 0913-865X
- Ichushi Web ID : 2020182921