MISC

2021年

精子完成プロセスは胚性ゲノム活性化時のトランスクリプトームに影響する

日本繁殖生物学会 講演要旨集
  • 坂本 瑞季
  • 伊藤 大祐
  • 井上 怜
  • 楊 力
  • 菊池 康之
  • 多田羅 麻由
  • 若山 清香
  • SHARIF Jafar
  • 坂下 陽彦
  • 前澤 創
  • 幸田 尚
  • 若山 照彦
  • 大我 政敏
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114
開始ページ
P-39
終了ページ
P-39
記述言語
日本語
掲載種別
DOI
10.14882/jrds.114.0_p-39
出版者・発行元
公益社団法人 日本繁殖生物学会

【目的】円形精子細胞を用いた顕微注入(ROSI)胚は,精子注入(ICSI)胚と比較し産仔率は低い。その原因として,RNAおよび,精子完成プロセスでのヒストン-プロタミン置換により本来除去されるべきエピゲノムが持込まれ,胚性ゲノム活性化時のトランスクリプトームに異常が生じていることが考えられる。そこで本研究ではROSI/ICSI胚のRNA-seqを行い,まずはICSI胚との比較により,ROSI胚特有なトランスクリプトームの全容を把握し,その制御機構を解明する。【方法】ROSIおよびICSIにより作出した1および2細胞期胚のRNA-seqデータからEdgeRを用いて発現変動遺伝子(DEG)を同定した。また,雄性生殖細胞からのRNAの持込を検証するため,同定したDEGについて,既存の円形精子細胞ならびに精子のRNA-seqデータからその発現量を調べた。【結果】ICSI胚と比較しROSI胚におけるDEGを1細胞期胚に406個(1c-DEG),2細胞期胚に3,434個(2c-DEG)を同定した(FDR<0.05)。これらDEGの内,1細胞期においてROSI胚で高い発現を示す1c-DEGの321個は,円形精子細胞で精子よりも有意に発現が高かった。一方,2c-DEGにおいて,1細胞期から2細胞期への変動を調べると,ICSI胚では発現が下がるがROSI胚では上がる遺伝子群が79個,その逆を示す遺伝子群が131個同定された。これらはいずれも円形精子細胞と精子との間で発現量の差が少ない遺伝子であった。【考察】1c-DEGは,主に円形精子細胞由来のRNA持込に起因することが示唆された。また2c-DEGの要因は,1細胞期のDEGにより誘発された可能性の他,円形精子細胞由来のエピゲノムが原因である可能性が考えられた。現在ROSI/ICSI胚のATAC-seqや既存の雄性生殖細胞のChIP-seqデータの統合的な解析により,円形精子細胞由来エピゲノムの持ち込みが,2c-DEGを生じる機構へ関与するのかを検証している。

リンク情報
DOI
https://doi.org/10.14882/jrds.114.0_p-39
CiNii Research
https://cir.nii.ac.jp/crid/1390008222261181952?lang=ja
ID情報
  • DOI : 10.14882/jrds.114.0_p-39
  • CiNii Articles ID : 130008103825
  • CiNii Research ID : 1390008222261181952

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