共同研究・競争的資金等の研究課題

2019年4月 - 2022年3月

社会性昆虫の階級分化と季節適応:母性効果の世代を超えた表現型多型の発生制御機構

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(B)  基盤研究(B)

課題番号
19H02965
体系的課題番号
JP19H02965
配分額
(総額)
15,470,000円
(直接経費)
11,900,000円
(間接経費)
3,570,000円

松山は柴尾(松山研・研究員)と共同して、ハクウンボクハナフシアブラムシの階級・モルフ分化に関与する環境要因として、ゴールの生理状態の変化に着目し、野外で6~9月に本種のゴールおよび宿主植物の葉の葉緑素量と光合成能を定量評価した。さらに、ゴールに生理状態の変化の兆しが表れる時期や原因、有翅モルフ(ゴール枯死前に有翅虫となって脱出)の分化誘導との関連について分析した。その結果、ゴールは初夏には葉緑素量が多く、葉と同様に高い光合成能を有していたが、アブラムシ個体数が急増する盛夏になると葉緑素量が減少して光合成能が低下し、ゴールの生理状態が悪化することがわかった。また、初夏のゴールでも生理状態が悪化すると有翅虫が出現し、ゴール間で有翅虫の出現時期に違いが見られた。ゴールの枯死には、アブラムシの個体数増加によるゴール組織の生理状態の悪化が関係しており、それに伴うゴールの栄養状態の低下が季節の合図となって有翅モルフが分化誘導される可能性が考えられる。
沓掛は、季節によってコロニー内で割合が変動する兵隊や有翅虫の分化制御に関わる母性因子を探索するため、野外ゴールから採集した雌成虫のRNAseq解析を行なった。野外ゴールは6~9月に1ヶ月おきに採集し、雌成虫の頭部および卵巣由来のトータルRNAからcDNAライブラリーを作成してHiSeqで解析した。その結果、成虫頭部におけるインスリン様成長因子(IGF)様ペプチドの遺伝子発現が初夏から秋にかけて有意に減少していることがわかった。IGFは成長ホルモンや栄養状態の影響下で動物の組織の成長や発達を促進するホルモンであることが知られている。本種のIGF様ペプチドの機能は未知だが、夏から秋にかけてゴールの栄養状態の低下に応答して分泌量が増減する、兵隊や有翅虫の分化制御に関わる母体側の情報伝達物質である可能性が考えられる。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-19H02965
ID情報
  • 課題番号 : 19H02965
  • 体系的課題番号 : JP19H02965