社会貢献活動

2020年9月24日

マスクを着けられない人に理解を


役割
出演, 取材協力
種別
テレビ・ラジオ番組
主催者・責任者
NHK関西
イベント・番組・新聞雑誌名
ニュースほっと関西

NHK NEWS WEB
【関西 NEWS WEB, 09月24日 18時37分】
新型コロナウイルスの感染拡大で、新たなマナーとして定着してきたマスクについてです。
感染対策として、マスクの着用は重要ですが、一方で、なかには、マスクを着けたくてもどうしても着けられない人たちもいます。

【発達障害がある人は】。
マスクの着用をめぐっては、国の発達障害情報・支援センターが、7月から先月にかけて発達障害がある352人を対象に行った調査で、56パーセントの人が「我慢して着けている」とか、「着用が難しい」などと回答しています。
発達障害がある人たちの自助グループ、「発達障害をもつ大人の会」の代表で、自身もADHD=「注意欠陥・多動性障害」やASD=「自閉スペクトラム症」と診断されている兵庫県芦屋市の広野ゆいさんも、マスクを着けるのが難しいと感じている1人です。
発達障害にともなう感覚過敏は視覚や触覚など、五感への刺激で、痛みなどの過剰な感覚が引き起こされると考えられています。
広野さんは「人よりも感覚が過敏なため、肌に触れるものが苦手で、ふだんは服やめがねも我慢して身につけています。特にマスクは顔に密着するので、痛みを感じやすく、ちくちくするような感覚がずっと続いて苦痛でしかありません。グループのメンバーたちも、必死に記事や論文を調べて、どんなときにマスクを着けなくてよいのか、正確に判断できるように情報交換しています」と話し、発達障害がある人の多くがマスクを着用することに抵抗を感じていると指摘しています。
また、マスクの着用が、「マナー」として定着しつつあることについて、「生きづらさが増したと感じます。会話をしない時などマスクを着けなくてもよい場面もあると思うのですが、みんながつけていると無言の圧力を感じますし、実際にマスクを着けずに外を歩いていてにらまれたこともあります」と自身の体験に触れたうえで、「もちろん、マスクをしていないから他の人に感染させても良いと思っているわけではないですし、自分も感染したくありません。『葛藤に悩みながらもずっと着けているのが平気ではない人もいる』ということを知ってもらえたらありがたいです」と訴えていました。

【専門家”理解広まることが必要”】。
神経科学を研究している杏林大学医学部の渥美剛史助教は、発達障害にともなう感覚過敏は脳の反応と考えられ、本人の努力や我慢で解決できるものではないとしたうえで、「発達障害がある人の脳の特徴として、神経の過剰な働きを抑制できないという点が挙げられます。触覚や聴覚などの感覚が人よりも敏感なため、マスクを着けると『縫い目が肌に当たって痛い』とか、『ちくちくが耐えられない』といった症状に悩まされるケースが多い」と指摘しています。
また、マスクの着用が困難な人の対応として、渥美助教は、根本的な解決策はないとしたうえで、「フェイスシールドなど、肌に触れる部分が少ないものや縫い目が少ないさらさらした素材のマスクで代用するほか、人混みを避けるといった対応が考えられます」と話しています。
そして、渥美助教は、「何よりも大切なのは発達障害に対する社会の受け入れや、考え方が変わることです。目に見えてわかる障害ではないため、感覚が過敏でマスクを着けることが難しい人がいるという理解が広まることが必要です」と強調していました。

【マスクの着用が難しい人たち】。
発達障害にともなう感覚過敏のほかにも、アトピーなどの皮膚炎や、脳の障害、呼吸器の病気などの理由で、マスクの着用が難しい人たちがいます。
こうした人たちに共通するのは、見た目だけでは、そのつらさが分かりづらいという点です。
マスクを着けられない人がいることをまずは知り、寛容な気持ちで接する姿勢が大事なのかもしれません。

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URL
https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20200924/2000035248.html