共同研究・競争的資金等の研究課題

2017年4月 - 2019年3月

時を表す語彙の体系的研究

日本学術振興会  科学研究費助成事業 特別研究員奨励費  特別研究員奨励費

課題番号
17J01634
体系的課題番号
JP17J01634
配分額
(総額)
900,000円
(直接経費)
900,000円
(間接経費)
0円

本年度は、(1)時を表す語彙の変遷の記述、(2)時を表す語彙の変化に関わる要因の考察を行った。詳細は以下の通りである。
(1)前年度に『分類語彙表―増補改訂版』(2004)および『日本古典対照分類語彙表』(2014)の1.1641現在、1.1642過去、1.1643未来から抽出した語群について、『日本国語大辞典 第二版』(2000-02)に掲出されている用例の年代を元に、それらの初出時期を推定した。これを元に時を表す語彙における史的変遷として次のような見通しを得た。(あ)遠過去・現在を表す語彙は、前者がムカシ、後者がイマという上代から一貫して使用頻度の高い語が現代に至るまで用いられている【=変動の度合い:小】。(い)近過去を表す語彙は、上代から用いられているコノゴロ、中世前期から用いられるチカゴロ、近代から用いられる「最近」と、各時代を通して徐々に現代の様相に至っている【=変動の度合い:中】、(う)至近過去・近未来を表す語彙は、中世後期~近世にかけて多様な語が現れ始め、現代に至る【=変動の度合い:大】。
(2)前年度及び今年度の事例研究の結果を踏まえて、どのような意味変化が日本語における時を表す語彙における語の交替に関与しているのかを考察した。その結果、(あ)空間的意味から時間的意味への意味変化を起こす語が通時的に多数見られ、かつそれらが少なからず定着していること、(い)反面、変化の方向性として想定しうる過去と未来の「双方から一方へ」「一方から他方へ」といった変化は見られにくく、かつそれが近代以降はより顕著になること、の二点を明らかにした。また、後者の変化の多くが未来を表す意味への変化であるのは、時代を通して豊富に存在する過去を表す語よりもあまり豊富でない未来を表す語を生産する必要性の方が高いことによると結論付けた。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-17J01634
ID情報
  • 課題番号 : 17J01634
  • 体系的課題番号 : JP17J01634