共同研究・競争的資金等の研究課題

1999年 - 2002年

光子-光子衝突型加速器を用いた標準模型を越える物理の現象論的考察

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(C)  基盤研究(C)

課題番号
11640262
体系的課題番号
JP11640262
配分額
(総額)
3,700,000円
(直接経費)
3,700,000円

光子-光子衝突型加速器における最も重要な研究対象は「ヒッグス粒子」である。
本研究では複数のヒッグス二重項が存在する模型において、重い中性ヒッグス粒子の検出方法を与えた。例えば「最小拡張超対称標準模型(MSSM)」では、CP固有値が偶の中性ヒッグス粒子が軽重あわせて2個、CP固有値が奇の中性ヒッグス粒子が1個現れる。このうちCP固有値が偶の重いヒッグス粒子(H)とCP固有値が奇のヒッグス粒子(A)は通常ほぼ縮退した質量を持ち、光子-光子衝突型加速器ではこれらが混在して生成される。実際、HやAがt(トップクォーク)などの重いフェルミ粒子対に崩壊する散乱振幅は、ヒッグス粒子を介さずに直接フェルミ粒子対を生成する散乱振幅と大きく干渉し、ヒッグス粒子の質量や崩壊幅等の性質に敏感に依存する反応断面積を与えた。特に、崩壊時間が短いためにヘリシティ状態を測定できるtクォーク対への崩壊過程では、tクォーク対のヘリシティを選択する事で、HとAとが干渉する事が示された。このように干渉の影響を大きく受けた反応断面積は、重心エネルギー分布の拡がりや、測定器のエネルギー分解能の影響を受けた後にも、ヒッグス粒子の諸性質に敏感であり、HとAを分離して観測できることが示された。このようなヒッグス生成過程の干渉効果は、ミューオン衝突型加速器でも観測される。但し、光子-光子衝突の場合に存在したヒッグス粒子を介さない散乱振幅はミューオン衝突の場合には無視できる。またミューオン衝突過程の最低次はループ振幅を含まないので「標準模型を越える物理の影響」を受けず、従って光子-光子衝突実験に含まれる「標準模型を越える物理の影響」をミューオン衝突実験を考慮することによって減らすことができる。従って、これら2種類の加速器は互いに相補的である。以上が当該研究における主たる成果である。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-11640262
ID情報
  • 課題番号 : 11640262
  • 体系的課題番号 : JP11640262