共同研究・競争的資金等の研究課題

2011年 - 2011年

長主鎖モノマーユニットを有する新規ポリヒドロキシアルカン酸の微生物生産

日本学術振興会  科学研究費助成事業 若手研究(B)  若手研究(B)

課題番号
23760757
体系的課題番号
JP23760757
配分額
(総額)
4,420,000円
(直接経費)
3,400,000円
(間接経費)
1,020,000円

本研究では、優れた生体適合性を有する微生物由来のバイオプラスチック、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)の生体医療材料としての応用に注目している。これまでの報告から、主鎖の炭素数が長い(長主鎖)モノマーユニットを持つPHAは、酵素分解性が向上し、生体適合性が向上することが期待できるが、微生物合成された例は限られていた。そこで、今年度は、PHA生産菌Ralstonia eutrophaをプラットフォームとした長主鎖モノマー含有PHA合成系の構築を行った。R.eutropha H16株をSodium 5-hydraxyvarelateおよびω-pentadecalactone(ω-PDL)を炭素源としてポリマー蓄積を行った結果、poly[(R)-3-hydroxybutyrate-co-3-hydroxypropionate-co-5-hydroxyvalerate][P(3HB-co-3HP-co-5HV)]が合成された。本結果から、R.eutrophaが、5HVNa、ω-PDLからモノマーである5-hydroxyvaleryl-coenzyme A(5HV-CoA)を供給可能な代謝経路を保持しているということが示された。また、細胞内でモノマーを重合する役割を持つPHA重合酵素の基質特異性は、5HV含率を向上させるために重要である。そこで、基質特異性の異なるPHA重合酵素の中から最も5HV含率の高いPHAを合成可能なPHA重合酵素を選定した。本条件において炭素源の添加濃度を調節し、5HV分率が、5から32mol%まで変化したPHAを合成することに成功した。得られた名組成のP(3HB-co-3HP-co-5HV)の熱的性質を測定した結果、結晶性が低いポリマーであることが示唆された。酵素分解実験の結果、poly(3-hydroxybutyrate)[P(3HB)]、poly(3-hydroxypropionate)[P(3HP)]はlipaseによって分解されなかったのに対し、P(3HB-co-3HP-co-5HV)およびP(5HV)まlipase分解性を示した。本結果は、予想した通り、5HVユニットがlipase分解性に貢献していることを示唆している。細胞毒性試験の結果、本研究で合成されたP(3HB-co-3HP-co-5HV)は、生体適合性の高いP(3HB)と同等の組胞生存率を示した。以上より、lipase分解性および高い生体適合性を有する新規構造のPHAを合成できたといえる。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-23760757
ID情報
  • 課題番号 : 23760757
  • 体系的課題番号 : JP23760757