共同研究・競争的資金等の研究課題

2020年9月 - 2022年3月

敗戦前後の「日本浪曼派」周縁の文学的営為に関する研究:『文藝世紀』を視座として

日本学術振興会  科学研究費助成事業 研究活動スタート支援  研究活動スタート支援

課題番号
20K21958
体系的課題番号
JP20K21958
配分額
(総額)
2,470,000円
(直接経費)
1,900,000円
(間接経費)
570,000円

令和2年度は、主に『文藝世紀』に掲載された太宰治の小説『不審庵』(1948年)の考察を行った。本作と初出誌との関係性を中心的な論点としつつ、典拠の一つと思しき古典落語「茶の湯」や前後の時期の作品との繋がりについて考察を深めてゆく過程で、『不審庵』を「日本浪曼派」に対する内部批判の作品として捉える見方が、より明確なものとなった。以上の成果については、令和3年度内に論文化・発表することを予定している。
同時に、高見順『今ひとたびの』(1946年)に関する基礎文献を収集した。その過程で見出された、本作と中河與一『天の夕顔』(1938年)との類似を指摘する平野謙の「解説」(角川文庫版、1956年)は、作品間の影響関係のみならず、戦後文壇における中河の位置やイメージについて考察する上で、きわめて重要である。
三島由紀夫『中世』(1945~1946年)に関しては、今般のコロナ禍の影響により、三島由紀夫文学館(山梨県山中湖村)での原稿調査の予定が立たないことから、作業が遅れている。ただし、本研究課題に関連する研究実績として、浜崎洋介著『三島由紀夫 なぜ、死んでみせねばならなかったのか』(NHK出版、2020年)の書評を『三島由紀夫研究』第21号(鼎書房)に、また佐藤秀明著『三島由紀夫 悲劇への欲動』(岩波新書、2020年)の書評を『日本近代文学会関西支部会報』第33号に寄稿した(いずれも近刊)。これら2篇の書評の執筆を契機として、従来三島の「右傾化」や「十代回帰」の端緒を開いた小説と位置付けられてきた『憂国』(1961年)を、ロマン主義批判の文脈から捉え直すことが可能となった。この他、2020年に相次いで刊行された三島関係の書籍を収集し、「日本浪曼派」や「ロマン主義」といったキーワードを軸として、論点の整理に努めている。

リンク情報
URL
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-20K21958/
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-20K21958
ID情報
  • 課題番号 : 20K21958
  • 体系的課題番号 : JP20K21958