2010年4月
中小企業における市場志向活動の定着プロセス
『一橋研究』
- 巻
- 35
- 号
- 1
- 開始ページ
- 1
- 終了ページ
- 16
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- 研究論文(大学,研究機関等紀要)
本論の目的は,中小企業群に市場志向的な文化が定着するまでに必要な要素について検討することである。バリューチェーンの川上から川下までを構成する複数の中小企業群が,独特の市場ニーズに対応するために活動の調整を行う場合,中小企業群には大企業のヒエラルキーのような調整メカニズムがないという問題がある。本論では兵庫県の綿織物産業と奈良県の靴下産業を比較検討し,両地域で市場志向的活動が定着するまでのプロセスを比較検討した。発見事実は4点にまとめられる。活動の起点となる①リーダー企業の企業家精神の他,市場志向活動を促進させる直接的要因である②小売業への進出と,③情報システムへの投資,阻害要因を除去する間接的努力である④機会主義的行動の抑制,の4点である。特に,固定資産への投資を必要としない問屋業が市場志向活動に対するコミットメントを示せるかどうかが,企業間の信頼形成において重要であることが示唆された。