共同研究・競争的資金等の研究課題

2021年4月 - 2026年3月

ゲージ理論・重力理論における赤外安全な散乱行列の構築とその応用研究

日本学術振興会  科学研究費助成事業 若手研究  若手研究

課題番号
21K13925
体系的課題番号
JP21K13925
配分額
(総額)
3,510,000円
(直接経費)
2,700,000円
(間接経費)
810,000円

量子電磁力学において、赤外発散の生じない散乱行列に基づいた散乱理論を発展させた。背景として、従来の電子のフォック状態に対する散乱行列は赤外発散が生じるが、電子が無限個の光子で囲まれているドレス化状態に対しては散乱行列が赤外有限に計算できることが知られていた。しかし、赤外有限な散乱行列を用いて実際に観測量を計算を行う方法は確立されていなかった。
私たちは一般的なドレス化状態に対する散乱行列を計算し、赤外発散が生じないためのドレス化状態に対する条件を導出した。また、一般的なドレス化状態を始状態とした場合において 、終状態の密度行列を計算し、低エネルギー光子の寄与を足し上げる計算を実行した。得られた終状態の密度行列から散乱断面積を計算し、始状態がドレス化状態の波束の場合は散乱断面積に対して従来の計算法とは異なる結果を与え得ることを明らかにした。従来の計算に基づくと、低エネルギー光子の放出により、始状態の干渉効果の情報が持ち去られるが、ドレス化状態を始状態とした場合においては始状態の干渉効果の情報は散乱過程において保存されることが理解できた。また、この性質は終状態として運動量が決まった状態でなく、複数の運動量の状態の重ね合わせ状態の波束を観測した場合でも同様に成り立ち得る結果を得た。得られた散乱行列の結果は量子電磁力学の持つ漸近対称性が散乱行列に対して与える制限とも整合していることも理解できた。これらの結果は散乱過程の始状態と終状態として空間に局在した波束状態を用いた際に、散乱断面積の計算精度を改善し得る重要な結果と捉えている。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-21K13925
ID情報
  • 課題番号 : 21K13925
  • 体系的課題番号 : JP21K13925

この研究課題の成果一覧

講演・口頭発表等

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