2018年4月 - 2020年3月
生理活性脂質の作用制御に基づく脳内出血治療標的の探索
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究 若手研究
脳内出血は脳血管の破裂に基づき血液が脳内に漏れ出す疾患である。近年の研究において好中球の浸潤が脳内出血の病態重篤度を左右することが報告されている。過去に、好中球の走化性因子として知られる生理活性脂質であるロイコトリエンB4 (LTB4) の受容体 (BLT1) が脳内出血時の好中球浸潤を制御するターゲットになることを見出しており(Hijioka M. et al., 2017)、本研究ではLTB4を含めた各種生理活性脂質が脳内出血病態に与える影響を明らかにすべく研究に取り組んだ。まず、脳内出血惹起後に脳内の各種脂質の含有量を測定した。その結果、LTB4をはじめ、各種脂質の産生量に変動が見られることを見出した。特に産生量の増加が顕著であったLTB4に注目し、in vitroでの解析を行った。マウスミクログリア細胞株であるBV-2細胞に対し、血液成分の一種であるトロンビンを処置したところ、培養上清中のLTB4量が有意に増加した。この時、BLT1の選択的アンタゴニストであるU-75302を処置しておくと、トロンビンによって誘導される各種炎症性サイトカインのmRNA発現量増加が抑制された。また、トロンビンを処置したBV-2細胞の培養上清に対し、好中球が遊走すること、その遊走がU-75302によって抑制することを見出した。これらの結果より、脳内出血時にはトロンビンによって活性化されたミクログリアによって放出されたLTB4がミクログリア自身の活性化を正に調節すること、また、好中球の浸潤を促進することが示唆された。
- ID情報
-
- 課題番号 : 18K15034
- 体系的課題番号 : JP18K15034