2012年9月10日
半乾燥草原における水文過程の陸面過程モデルと観測値の比較検証
日本地理学会発表要旨集
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- 巻
- 2012
- 号
- 82
- 開始ページ
- 155
- 終了ページ
- 100056
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- DOI
- 10.14866/ajg.2012a.0_100056
- 出版者・発行元
- 公益社団法人 日本地理学会
1.はじめに <BR>気候変動予測に用いられる地球システム統合モデルにおいて、陸面での熱・水・物質の交換を含む水文気象過程を計算するためのモジュールが陸面過程モデル(LSM; Land surface process model)である。本研究では土壌水分、蒸発散量等の水文気象観測データとLSMの計算結果の比較検証を半乾燥域の中国とモンゴルの草原において行い、LSMによる水文過程の再現性を確認して、算出精度向上に必要な知見を得る事を目的とする。<BR>2.使用したとデータ<BR>使用したLSMはIPCC第5次評価報告書(AR5)に向けた研究用に東大AORI/国立環境研/JAMSTECが共同開発したMIROC5(Watanabe et al., 2010)に組み込まれているMATSIRO(Takata et al., 2003)である。中国の半乾燥草原ではCEOP(地球エネルギー・水循環統合観測プロジェクト)による中国東北部のTongyu(44.416 N, 122.867 E、標高:184m)における地温・土壌水分・地表面熱収支をLSMの検証用データ(2002年10月~2004年12月)として用いた。モンゴルの半乾燥草原ではRAISE(北東アジア植生変遷域の水循環と生物・大気圏の相互作用の解明)によるモンゴル東部の草原Kherlen Bayan Ulaan(KBU:47.2127 N, 108.7424 E、標高:1235 m)におけるデータを検証用データ(2002年11月~2007年4月)として用いた。<BR>3.結果<BR> 地温の再現性は高かった。凍結時期はモデルと観測の変化傾向はほぼ同じであったが、融解時期(2~3月)にはモデルの方が観測よりも地温が高く融解が早く進んでいた。より深い層の地温でも同様の傾向が見られた。正味放射量は、モデルの方が地温の上昇が早い春先の時期(2~3月)、モデルの方が観測より低くなっていた。上向き長波放射量について、モデルと観測を比較すると春先の融解時にはモデルの方が観測より高くなっていた。従って、正味放射量が春先にモデルの方が低くなったのは、地表面温度がモデルの方が高く、上向き長波放射量が高くなったためであると考えられる。土壌水分量については、再現性が悪く、特に冬季の凍結時については、モデルの方が観測に比べてかなり高い値を示していた。MATSIROでは、土壌の凍結・融解に伴う熱伝導率や透水係数の変化も考慮に入れている。潜熱フラックスは比較的再現性が高かったが、顕熱フラックスは再現性が低かった。観測値とモデル出力の違いの要因については、今後、土壌の物理係数や水理パラメータについて検討する必要があると考えられる。また、ADMIPプロジェクトの一環で他のLSMとの相互比較を行う予定で、それを通じて本研究で用いたモデルの特性や位置づけを明らかにして、再現性向上に必要な知見として活用の可能性がある。
- リンク情報
- ID情報
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- DOI : 10.14866/ajg.2012a.0_100056
- ISSN : 1345-8329
- J-Global ID : 201202218054214076
- CiNii Articles ID : 130005456834