共同研究・競争的資金等の研究課題

2016年4月 - 2018年3月

タンパク質レベルの遺伝子量補償機構の体系的な解析

日本学術振興会  科学研究費助成事業 特別研究員奨励費  特別研究員奨励費

課題番号
16J00852
体系的課題番号
JP16J00852
配分額
(総額)
1,900,000円
(直接経費)
1,900,000円
(間接経費)
0円

多くの遺伝子では、遺伝子コピー数の増加はタンパク質発現量の増加に直接的に結びつき、そのコピー数が2倍になるとタンパク質発現量も2倍になる。これに対して、少数の遺伝子では、遺伝子コピー数の増加に伴いmRNAの発現量は増加するもののタンパク質発現量の増加にはそのまま結びつかないことが知られている。この現象は遺伝子量補償と呼ばれ、タンパク質複合体を構成するサブユニットをコードする遺伝子で優位に観察されることから、その生物学的役割の一つにサブユニット間の量比の維持があることが強く示唆されている。また、そのメカニズムについては、細胞内の主要なタンパク質分解経路であるユビキチン-プロテアソーム系を介したタンパク質分解の加速の関与が示されている。しかしながら、過剰なサブユニットのユビキチン化がどのようなメカニズムで引き起こされるのかは、近年いくつかのメカニズムが報告されているものの、それらの関係性は不明であり、全容解明には至っていない。本研究は、細胞が過剰なサブユニットを選択的にユビキチン化し分解するメカニズムの解明を目指し、これに関与するE3ユビキチンリガーゼの同定、ならびに、タンパク質N末端のアセチル化が関与する可能性の検証、を行った。E3ユビキチンリガーゼの解析では、Tom1及びNot4の関与を示した。一方、タンパク質N末端のアセチル化については、それを担う複数の酵素(Naa10, Naa20, Naa40)の関与を示した。このことは、複数のE3ユビキチンリガーゼ及びN末端アセチル化酵素を介して遺伝子量補償が起こることを示している。本研究により、複合体サブユニットの量比をコントロールするメカニズムの複雑さが具体化したと同時に、今後この分野の研究で重要となる問題が定義されつつある。以上の成果は論文としてまとめられている段階であり、当初の期待通りに研究が進展している。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-16J00852
ID情報
  • 課題番号 : 16J00852
  • 体系的課題番号 : JP16J00852