共同研究・競争的資金等の研究課題

2018年4月 - 2020年3月

日本語における名詞要素を含む接続形式の歴史的研究

日本学術振興会  科学研究費助成事業 特別研究員奨励費  

課題番号
18J10064
体系的課題番号
JP18J10064
配分額
(総額)
1,100,000円
(直接経費)
1,100,000円
(間接経費)
0円

日本語における名詞要素を含む文法形式をテーマとして、①文末名詞の形式化についてのケーススタディ、②逆接を表す「くせに」の歴史的変遷、③条件文として使われる「限り」の歴史的変遷、の三点について研究を進めた。
①文末に名詞が位置する構文である「文末名詞文」について、「名詞+だ」がどの程度形式化するか、個別の事例に即して論じた。自身が既に研究を行っている「模様だ」「様子だ」を例に、前接語の形態や意味的特徴から両者を比較した。結果的に、「模様だ」が時代を経るごとに名詞としての性質を失い一語の文法形式として固まっていくのに対して、「様子だ」にはそのような傾向は認められず、名詞としての性質を強く保持していることを示した。
②逆接を表す「くせに」の成立および歴史的展開について論じた。初期の「くせに」は「~であるものの常として」といった意味を表しており、これは名詞「癖」の意味が強く認められることから文法形式とは見なし難いことを述べた。18世紀末ごろから逆接的な解釈が見られ始めるが、そのメカニズムとしては、「癖」に語彙的に存在する否定的な評価性を軸に前件と後件の関係を矛盾と捉え直したと想定できる。また、「くせに」は当初は「名詞+の+くせに」の形しか見られなかったが、18世紀末から19世紀にかけて活用語を承ける例が見られるようになったことを明らかにした。
③仮定条件を表す「限り」が歴史的に見てどのような変遷を辿っているかについて論じた。「限り」の用法を接続助詞的用法と副助詞的用法とに分けて考えると、中古・中世においては「全部、皆」の意を表す用法や程度・限定を表すような副助詞的用法が中心的で、接続助詞的用法は「時」の意を表すものに限られていたことが分かった。近代以降になると副助詞的用法は程度を表す以外は衰退した一方、否定形を承ける例が増加し、これによって条件形式と捉えられるようになったことを述べた。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-18J10064
ID情報
  • 課題番号 : 18J10064
  • 体系的課題番号 : JP18J10064

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