共同研究・競争的資金等の研究課題

2017年4月 - 2020年3月

服飾からみる近代日本の生成---ハイカラと上品

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(B)  基盤研究(B)

課題番号
17H02305
配分額
(総額)
14,040,000円
(直接経費)
10,800,000円
(間接経費)
3,240,000円

2018年度の研究内容の第一は、2017年度から継続する日本髪に関する理解をより確かなものにするために、京都の山中恵美子氏の美容室において親しく指導を受けたことである。山中氏は伊勢神宮の斎宮のお髪上げも担当する美容師であり、時代装束に関する第一人者の一人でもある。また昨年に続いて東京下谷の大庭啓敬氏の指導にも与り、図版では詳細が不明な髪型について詳しくご教示賜った。
また、やはり2017年度から継続する芸者の文化・風俗に関するフィールドワークを京都と札幌で実施した。昨年の東京と大阪では主として文化の継承に尽力する傾向の高い料理屋によるものであったが、本年の京都と札幌の場合はむしろ従来型の男性の娯楽に奉仕するタイプの料理屋であった。中でも特筆すべきは札幌の料理屋は伝統的な料理屋建築・しつらいを保持しており、その雰囲気を知ることができた点である。
また本年の特色の一つは、明治から大正期のハイカラ風俗の中の大きなファクターである洋館に関する実習として、鎌倉の旧前田家別荘、駒場の旧前田邸、京都の大山崎山荘、札幌の旧永山武四郎邸などを見学した。また鎌倉の吉屋信子記念館と旧永山邸では研究発表会を開催し、研究代表者と協力者が研究成果の報告を行い、活発な議論があった。
さらに夏にはハンブルグ芸術工芸美術館とベネチア東洋美術館において、明治期から近年までに欧州に流出した着物の調査を実施した。収集内容は実に玉石混交であり、貴重な作例と最近のレンタル衣装業者が放出した古着や状態の悪いものなども混在していた。どのような来歴・状態のものであろうと保存する価値はないとは言えないが、展示に際してはやはり日本人の詳しい者が関与する必要が痛感された。
また、本研究課題以外の研究会(ジャポニスム学会シンポジウムや文化学園シンポジウム等)にも積極的に参加し、互いに貴重な経験・情報交換を行うことができた。

ID情報
  • 課題番号 : 17H02305