共同研究・競争的資金等の研究課題

2009年4月 - 2011年3月

日本語の言語運用における社会階層間の差異についての研究

日本学術振興会  科学研究費補助金特別研究員奨励費  特別研究員奨励費

課題番号
09J00018
体系的課題番号
JP09J00018
担当区分
研究代表者
資金種別
競争的資金

言語力の格差の問題、そして、それにともなう学力格差の問題を考えるうえで、子どもたちがどのような言語運用能力を身につけて入学してくるかは重要な問いである。この点を曖昧にしたままで、「言語力」を育成しようとすると、現在確認されているような学力格差が新たな形で生じかねない。そこで本研究では、二つの問題の設定を行った。一つ目の問題は、社会階層間にみられる言語運用上の差異の性質・程度について明らかにすることである。二つ目の問題は、そういった差異が、学校生活や授業を通してどのように学習を媒介しているのかを明らかにすることである。これらによって、社会階層間にみられる言語運用の特性を明らかにし、それらが学校生活で現れる様々な有利・不利を生み出す様子を描き出すことができる。
上記のような問題設定のもと、小学校1年生に対して絵を見て物語を作ってもらう「物語作り調査」の再分析を行った。その結果、主語を省略する傾向にある「精密コード」(文脈に依存しない、普遍性の高い発話を規制するコード)を有していない子どもは、発話開始までに時間を要する傾向があるということ、「精密コード」の獲得が、親の職業、家族構成によって左右されるというものであった。
二つ目の分析は、異なるバックグラウンドを有する小学校2校において行ったフィールドワークのデータの分析である。観察対象は、主に2年生の学級である。ミドルクラス的な背景を有する小学校では、内面化された規律に働きかける統制様式を用いることが多い。一方、ワーキングクラス的な背景を有する学校では、直接的・具体的な行動を支持する統制様式を用いることが多かった。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-09J00018
ID情報
  • 課題番号 : 09J00018
  • 体系的課題番号 : JP09J00018