MISC

2008年

糸魚川-静岡構造線活断層帯中南部,茅野~富士見~白州の変動地形の再検討と写真測量システムを利用した詳細平均変位速度解明

日本地理学会発表要旨集
  • 澤 祥
  • ,
  • 松多 信尚
  • ,
  • 杉戸 信彦
  • ,
  • 糸静線重点調査 変動地形グループ

2008
73
開始ページ
172
終了ページ
172
記述言語
日本語
掲載種別
DOI
10.14866/ajg.2008s.0.172.0
出版者・発行元
公益社団法人 日本地理学会

<BR>1.はじめに<BR> 地震調査研究推進本部は,糸魚川-静岡構造線(以下,糸静線)での重点的調査観測を平成17年度から始め,発表者等はその中で変動地形学的手法によって活断層の位置情報と変位量情報を高精度化する作業を進めている.平成19年度は,糸静線中部南半:茅野~富士見~下蔦木と南部北半:下蔦木~白州の調査を行った.本発表では,活断層の位置情報(地形図等に表示)と変位量情報(断面図・平均変位速度分布)を示すことを目的とし,活断層の特徴(変位地形から推測される断層の形状と変位様式等)については杉戸ほか(2008,本学会)で報告する.<BR>2.調査方法<BR> 次の様な手順で変動地形学的調査を行った.1)米軍撮影縮尺1/1万白黒空中写真,国土地理院1960年代撮影縮尺1/2万および1970年代撮影縮尺1/1.5万白黒空中写真を詳細に写真判読し,それをもとにした現地調査を実施,2)1の結果をもとに地形発達を加味し活断層の位置を示した地形学図を作成,3)2004年撮影糸静線パイロット重点調査1/1万カラーオルソ空中写真上に2の結果を展開,4)3をもとにした写真測量システムで断面測量を行って変位量を計測し,地形改変の激しい場所においては米軍と国土地理院の写真を図化評定して本システムに重ねて同様に測量を行った.この調査方法により,変位地形が失われた場所も含め現地測量と同程度の精度で従来よりもより高密度に変位量を求められ,より詳細な平均変位速度の検討が可能となった.<BR> 活断層の認定にあたっては地形発達に留意し,河川の浸蝕では出来得ない形状の崖や,堆積作用で説明できない上に凸型形状を示す斜面等,断層運動を想定しないとその成因が説明できない地形の存在を確認した.抽出した活断層線は,I:存在とその位置が確実厳密に特定できるもの,II:存在は確実であるが,浸蝕堆積作用・地形改変によって厳密な位置が分かりにくくなっているもの,III:存在は確実であるが,浸蝕や埋積作用によって変位地形が消滅しているもの(以上は活断層)と,IV:断層変位地形としては認定できるが,第四紀後期の活動を示す明瞭な証拠がなく明確に特定できないもの(推定断層)の4つに分類した.<BR>3.地形面<BR> 研究地域の地形面を,火山灰との層位関係,分布高度と連続性,既存の炭素同位体年代測定値および既存研究に基づき,それらを総合的に解釈して上位のHH面から下位のL3面までの9面に分類した.<BR>4.活断層の分布と平均変位速度<BR> 茅野~富士見~白州の活断層の位置情報は,澤(1985)・活断層研究会編(1991)・下川ほか(1995)・澤ほか(1998)・田力ほか(1998)・田力(2002)・池田ほか編(2002)・中田・今泉編(2002)等と概ね整合的であるが,以下の新知見が得られた.<BR>1)富士見地区(茅野~富士見~下蔦木)<BR> 活断層は縦ずれ変位と左横ずれ変位を示し,平均鉛直変位速度(概して1 mm/yr以下)に比べ平均水平変位速度(3.5~5.0 mm/yr)の方が大きく,この区間では左横ずれ変位が卓越する.北西~南東走向のトレースは,(1)宮川沿いの八ケ岳山麓扇状地の南西端を走る青柳断層(澤ほか,1998)(左横ずれ)と,左横ずれによって形成されたバルジ列の(2)北東側(南西上がり)と(3)南西側(北東上がり)の3条に大別される.富士見南端の先能から下蔦木までの釜無川沿いでは,トレースが浸蝕作用のために不明瞭で位置を確実に特定しにくいが,横ずれ断層運動に伴うバルジ形成をうまく説明できることから,(2)(3)のトレースが下蔦木の変位地形へ連続するものと予想される.<BR>2)白州地区(下蔦木以南)<BR> 下蔦木以南のトレースはほぼ南北の走向を示し,山麓線付近を緩やかに湾曲しながら西上がりの縦ずれ変位をあたえ連続する.左横ずれ変位は大坊付近以南を除いて認められず,活断層の位置情報は従来と大きな相違はない.しかし,ピット調査を行い火山灰との関係を確認し,より詳細な地形区分を行った結果,変位基準である扇状地面の年代が従来よりも新しくなった.そのため平均鉛直変位速度は0.2~0.8 mm/yrとなり,従来見積もられていた値よりも大きくなった.

リンク情報
DOI
https://doi.org/10.14866/ajg.2008s.0.172.0
J-GLOBAL
https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200902218308340993
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/130007014326
ID情報
  • DOI : 10.14866/ajg.2008s.0.172.0
  • ISSN : 1345-8329
  • J-Global ID : 200902218308340993
  • CiNii Articles ID : 130007014326

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