共同研究・競争的資金等の研究課題

2019年8月 - 2021年3月

メトホルミンと抗PD-1抗体併用による腫瘍微小環境の代謝改変メカニズムの解明

日本学術振興会  科学研究費助成事業 研究活動スタート支援  研究活動スタート支援

課題番号
19K23887
体系的課題番号
JP19K23887
配分額
(総額)
2,860,000円
(直接経費)
2,200,000円
(間接経費)
660,000円

本研究はメトホルミンと抗PD-1抗体併用による腫瘍退縮の実験系を用いて、腫瘍浸潤CD8T細胞(CD8 TILs)、腫瘍細胞の同時解析によって腫瘍微小環境の代謝を制御する因子を活性酸素(ROS)の関与も含め、明らかにすることを目的としている。予備実験からメトホルミンの誘導する抗腫瘍効果にROSを起点としたNrf2-mTORC1 経路の活性化がCD8TILsにおいて起こることが重要であることが分かってきた。
さらにメトホルミンはCD8TILsの解糖系を亢進し、サイトカイン産生を増加させるが、抗酸化剤処置によってこれらの現象が消失するという知見も得ている。
従い、今年度は解糖系とROS-Nrf2-mTORC1経路がどのような分子機構で連動するのかを明らかにするべく、2-DG(解糖系阻害剤)処置時のCD8TILs におけるNrf2、mTORC1 関連分子(Nrf2,HO-1,p-S6,Ki67)の発現をFACS にて解析した。その結果、解糖系阻害によってNrf2、mTORC1 関連分子の発現が低下した。その一方でNrf2 およびmTORC1 阻害剤は解糖系関連分子(Glut-1)の発現、サイトカインの産生能に影響は与えなかった。これらの事実からメトホルミンによるCD8TILsにおけるNrf2-mTORC1 経路の活性化にはROSを起点とした解糖系の亢進が必要であるが、Nrf2-mTORC1経路の活性化は細胞の機能維持よりもむしろ細胞増殖の維持に寄与している可能性が示唆された。腫瘍細胞でも同様の検討を行ったが、メトホルミンおよび併用治療は腫瘍細胞におけるNrf2-mTORC1経路には何ら影響を与えていなかった。しかし、腫瘍細胞では解糖系の低下が認められ、免疫不全マウスでは消失したことから、メトホルミンが誘導する腫瘍細胞の代謝改変には免疫細胞の関与が必須であると考えられた。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-19K23887
ID情報
  • 課題番号 : 19K23887
  • 体系的課題番号 : JP19K23887