MISC

2019年8月

股関節内外旋運動が体幹筋に及ぼす影響

理学療法学
  • 中井 雄貴
  • ,
  • 川田 将之
  • ,
  • 宮崎 宣丞
  • ,
  • 木山 良二
  • ,
  • 井尻 幸成

46
Suppl.1
開始ページ
P5
終了ページ
3
記述言語
日本語
掲載種別
出版者・発行元
(公社)日本理学療法士協会

<p>【はじめに、目的】</p><p> 体幹筋は歩行やADLで重要な役割を果たすことが知られている。腰痛や脊椎の術後等において、体幹筋のトレーニングは必須であるが、体幹の運動を伴わずにトレーニングすることが必要な場合がある。また、日常生活では体幹筋単独で活動することは少なく、下肢と機能的に連動して活動することが多い。背臥位における片側の股関節の内外旋運動は、骨盤を固定するために体幹筋の活動が必要であり、トレーニングとして活用できると考えられる。本研究の目的は、健常者を対象に背臥位における股関節内外旋運動が体幹筋に及ぼす影響を明らかにすることである。</p><p>【方法】</p><p> 対象は健常成人20名とした。膝関節90°屈曲位の背臥位における片側の股関節内外旋の等尺性収縮、及びクランチと片側下肢自動伸展挙上(ASLR)における体幹筋の活動を比較した。なお、股関節内外旋の等尺性収縮は左右股関節それぞれで行い、抵抗は大腿骨内外側上顆に加え80Nに統一した。</p><p> 体幹筋の活動の分析には、表面筋電計(EMG)および超音波画像診断装置(エコー)を用い、活動電位と筋厚を測定した。分析対象は右側の外腹斜筋、内腹斜筋、腹直筋(EMGのみ)、腹横筋(エコーのみ)、多裂筋(EMGのみ)とした。活動電位は最大随意収縮時の活動電位で正規化し、筋厚は安静時の筋厚で除し正規化した。</p><p> 事前に、筋活動と筋厚の最小可検変化量を算出した。統計学的検定には反復測定の一元配置分散分析もしくはFriedman検定、および多重比較検定を用い比較した。有意水準は5%未満とした。</p><p>【結果】</p><p> 右内腹斜筋の活動電位は、右股関節内旋20.8±11.6%と左股関節外旋13.7±9.0%(p < 0.001)、右外腹斜筋は右股関節外旋11.6±9.2%、左股関節内旋11.2±9.2%( p < 0.001)で最も高い値を示した。また、右腹直筋はクランチ17.2±7.3% (p < 0.001)、右多裂筋は右股関節内旋25.7±13.4%と左股関節外旋22.8±12.5%( p < 0.001)で高い値を示した。</p><p> 右内腹斜筋の筋厚は活動電位とほぼ類似した傾向を示したが、外腹斜筋の筋厚は一部に筋活動と異なる傾向を示した。右腹横筋の筋厚は、右股関節内旋144.5±27.4%と左股関節外旋129.2±25.7%で高値を示した(p < 0.001)。活動電位および筋厚で観察された差は、最小可検変化量よりも大きかった。</p><p>【考察、結論】</p><p> 本研究の結果より、片側股関節の内外旋運動はクランチやASLRよりも有意に同側の内腹斜筋と多裂筋、対側の外腹斜筋を活動させることが示された。これは、片側の股関節の回旋運動に抗して骨盤・体幹を安定させるためにカウンターとして、体幹筋群の活動が必要とされるためである。片側の股関節内外旋の負荷を利用した運動は、下肢と体幹を連動させる通常の運動に近似した筋活動を促すトレーニングとして利用可能と考えられる。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は鹿児島大学医学部疫学研究等倫理委員会の承認(No 170116)を得たものである。ヘルシンキ宣言に則って研究計画の説明を行い、書面にて同意を得た後に研究を実施した。</p>

リンク情報
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/130007694272
ID情報
  • ISSN : 0289-3770
  • eISSN : 2189-602X
  • 医中誌Web ID : T906481759
  • CiNii Articles ID : 130007694272
  • identifiers.cinii_nr_id : 9000403987218

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