2011年4月
死亡時の職業の有無でみた自殺既遂者の心理社会的特徴 心理学的剖検による76事例の検討
日本社会精神医学会雑誌
- 巻
- 20
- 号
- 2
- 開始ページ
- 82
- 終了ページ
- 93
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- 研究論文(学術雑誌)
- 出版者・発行元
- (一社)日本社会精神医学会
自殺者の家族に対して独自に作成された面接票に準拠し、事前にトレーニングを受講した精神科医師と保健師等の2人1組の調査員によって半構造化面接を実施するという、いわゆる心理学的剖検の手法で情報収集がなされた自殺既遂事例76事例について、死亡時の就労状況から有職者と無職者に分類し、心理社会的特徴や精神医学的特徴を比較検討した。有職者は既婚の中高年男性を中心として、死亡1年前のアルコールの問題や死亡時点の返済困難な借金といった社会的問題を抱えていた事例、死亡時点に罹患していたと推測される精神障害としてアルコール使用障害が多く認められた。無職者では、有職者に比べて女性の比率が高く、青少年の未婚者が多く認められた。これらの結果から、有職者に対しては、職場でのメンタルヘルス支援の充実、アルコール関連問題と自殺に関する啓発と支援の充実、そして債務処理に関わる司法分野と精神保健福祉分野の連携の必要性が示唆された。一方で、無職者に対しては、若い世代の自殺予防に関する啓発と精神保健的支援の充実の必要性が示唆された。(著者抄録)
- ID情報
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- ISSN : 0919-1372
- 医中誌Web ID : 2011200158