2015年4月
文脈と構成性 ーレカナティ『真理条件的語用論』を中心にー
哲学の探求
- 巻
- 42
- 号
- 開始ページ
- 168
- 終了ページ
- 189
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- 研究論文(学術雑誌)
本稿は,意味論と語用論の理論的境界に関する問題において有力であると考えられている文脈主義を議論対象とし,以下の二点を目標とする.第一に,文脈主義の内実を明らかにすること.そして第二に,文脈主義において最も急進的であると言われるレカナティの理論を批判的に考察すること.これらの目標を達成するため,まず 1 章では,発話文脈が文の真理条件的内容に対して持つ影響のうちモジュレーションと呼ばれるプロセスに着目し,文脈主義を二つの立場―穏健な文脈主義と急進的な文脈主義―に大別する.次に 2 章で,レカナティの理論における意味論的内容決定のプロセスを詳細に検討し,構成性という観点からその問題点を明らかにする.以上の議論を通して 3 章では,文の真理条件的内容についていかなる理論的位置付けが適切なのか示唆されることになる.