論文

筆頭著者
2020年3月

浦安漁民騒動事件と漁場水域の喪失

東海大学教養学部紀要
  • 勝田悟

第50輯
開始ページ
83
終了ページ
98
記述言語
日本語
掲載種別
出版者・発行元
東海大学教養学部

「水質汚濁防止法」が施行されていない状態で発生した江戸川水系における里海の汚染による破壊は、行政による対処は望めず、弱者が有する環境権が認められなかった極めて悲惨な例である。有害物質による多くの汚染対策や情報公開による配慮など再発防止は法令によって多くが規制されているが、生態系及び汚染メカニズムはまだ不明なものが多く存在し、新たな汚染が発生した場合の対処システムを整備していく必要がある。環境汚染はいまだに社会問題となってからの対処が中心であるが、風評被害、環境権の喪失など被害者を窮地に追い詰めるようなことがないようにしなければならない。最も注意すべき再発防止策であろう。
他方、当該事件の発端となった漁場すなわち公有水面に立地している大規模開発は急激な経済的価値を創造しているが、再度長期的視点を持って検討する必要がある。人工物は自然災害など自然の変化に非常に脆弱である。行政及び企業は、漁民の里海における持続的な経済活動を喪失させ、公有水面の埋め立てによる都市開発を選択し、経済活動を向上させたが今後持続可能性があったのか検証しなければならない。海域におけるコモンズの破壊が長期的に生態系にどのような影響を与えているのか社会的責任として確認もしなければならない。まだ開発は終了していない。開発のLCA(Life Cycle Assessment)を考えていくシステムが構築されることを期待したい。

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