2004年
里山散策道における体験評価指標に関する考察
日本林学会大会発表データベース
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- 巻
- 115
- 号
- 0
- 開始ページ
- B04
- 終了ページ
- B04
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- DOI
- 10.11519/jfs.115.0.B04.0
- 出版者・発行元
- 日本森林学会
1.はじめに 里山の風景や文化,生態系を維持してきた,失われつつあるシステムを再構築するために,各地で様々な取り組みが始められているが,その入り口に当たる仕掛けのひとつとして,地域の里山を紹介し,理解するための散策道の設置をあげることができる。里山を利用した散策道は,レクリエーションや観光に加え,環境教育や日常的な健康増進などの面でも可能性を持っているが,魅力あるコース作りのためには適切な指標に基づく評価と,その評価に対応した計画が必要である。そこで本研究では,里山散策道の特性を歩行者の体験の面から評価するための指標を提案し,実際の散策コース上での調査を通して,里山散策道の特性把握を行うとともに,その有効性について検討を行う。2.方法 調査対象地とした滋賀県志賀町は,琵琶湖の西岸に位置する。志賀町では2002年3月に,比良山麓の里山地帯をめぐる,「比良里山散策道整備構想」を策定した。本研究では,この構想に基づいて,集落近くを通るもの,森林が多いもの,歴史的遺構が見られるものなど,タイプが異なる4コースを調査対象として選択した。 調査は,(1)現地踏査によるコースの特性の記述,および(2)被験者数名による現地での歩行体験評価実験,の2項目からなる。 (1)では,まずKaplan et al.(1998)に基づいて,環境心理的な散策道の特性を把握するための12項目の評価指標を作成した。そして,現地踏査により各コースのランドマーク,景観的なポイント,植生の状況などを1/5,000地形図上に記録し,それぞれがどの指標に対応するのかを検討した。これに基づいて,現地踏査に基づくコース特性を記述した。 (2)では各コース4_から_6名の被験者が歩行し,終点でそのコースを体験した評価についての質問紙調査を行った。設問は従来のSD法による代表的な12形容詞対5段階評定によるものと,本研究で新たに設定した12指標5段階評定によるものの2種類を同時に行った。3.結果と考察 SD法による心象評価について因子分析を行うと,第1,第2因子で,全体の56_%_を説明することができ,それぞれ,散策路の総合評価と排他的印象に関する因子と解釈できた。各コースにおける各被験者の第1,第2因子のスコアを座標軸上にプロットしたところ,コースごとの特性の違いを見出すことはできなかった。 本研究で新たに設定した評価指標について因子分析を行うと,第1_から_3因子で,全体の62_%_を説明することができ,それぞれ,散策路の安全・親近性,文化性,聖性に関連する因子と解釈できた。各コースにおける各被験者の第1,第2因子のスコアを座標軸上にプロットすると,コースごとにまとまって分布し,コースごとの特性の違いを示すことができた。 里山散策路の評価指標としては快適性などに関わる指標の重要さに加えて,その路線が安全性や親しみやすさに配慮されているか(「排他的印象」や「安全性・親近性」),集落の生活や歴史的資源などの文化性にふれられるかどうか(「利便性・文化性」),といった点も非常に重要であると言える。 また,現地踏査に基づくコース特性の記述と,新たに設定した指標による被験者の体験評価との間の関係も,比較的よく対応していた。本研究で設定した指標を用いた評価は,より具体的にコースの特性を把握しうる方法であると考えられる。
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- DOI : 10.11519/jfs.115.0.B04.0
- CiNii Articles ID : 130007020173