共同研究・競争的資金等の研究課題

2019年10月 - 2023年3月

湖沼堆積物を用いた最終氷期以降の永久凍土変動の復元と陸域環境への影響評価

日本学術振興会  科学研究費助成事業 国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))  国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))

課題番号
19KK0264
体系的課題番号
JP19KK0264
配分額
(総額)
18,330,000円
(直接経費)
14,100,000円
(間接経費)
4,230,000円

本年度は、モンゴル北西部のサンギンダライ湖の湖底堆積物コアの放射性炭素年代測定、花粉組成及び微生物組成分析を行った。堆積物の年代軸の精度を上げるため、追加の放射性炭素年代測定を行い、堆積物コアは約4.1万年の記録であることが分かってきた。そこに記録される花粉化石は、全期間を通じてヨモギ属などの草本・低木花粉がマツ属などの高木花粉よりも優占し、草本植生が優勢であった。マツ属などの高木花粉の増減は北緯50度の夏季日射量変動と連動し、永久凍土融解に伴う土壌水分量の増減に対応した可能性が示唆される。微生物相については、堆積物コアの上位層(完新世)は嫌気性従属栄養細菌、下位層(最終氷期)は硫黄酸化菌、通性独立栄養細菌、多様な有機物を好気的に分解する細菌が多くを占めていた。特に、硫黄酸化菌は顕著な変動を示した。この地域は最終氷期に連続永久凍土地帯であったことから、微生物相が永久凍土と密接に関係していた可能性を示唆する。
この他に、永久凍土地帯の湖沼堆積物の安定硫黄同位体比と硫黄含有量の変動が永久凍土変動の指標となり得るかを検証するため、昨年度に引き続き、モンゴル南西部・ブンツァーガン湖表層短尺コアの分析を進めた。対象期間は中世の小氷期と現行の温暖化を含む1740年~2014年である。本年度は、堆積物から分画した黄鉄鉱を示すクロム還元性(CRS)の硫黄同位体比測定と共に、堆積物中の古気候指標分析を行った。硫黄同位体マスバランスの計算から、全期間を通じて、硫酸塩とCRSの硫黄同位体比の分別効果は約40‰上昇したことが明らかとなった。これと同様に、湖水の塩濃度の上昇も認めらた。これらの結果は、硫黄同位体比の分別効果の増加は、湖水の硫酸イオン濃度の上昇に起因すると考えられ、その上昇は温暖化に伴う湖水の蒸発と永久凍土活動層からの硫酸イオン量の増加によることが明らかとなってきた。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-19KK0264
ID情報
  • 課題番号 : 19KK0264
  • 体系的課題番号 : JP19KK0264