共同研究・競争的資金等の研究課題

2020年4月 - 2023年3月

水分保持力を軸にしたムチン機能における腸内細菌叢由来代謝物の関連性

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(C)  基盤研究(C)

課題番号
20K08294
体系的課題番号
JP20K08294
配分額
(総額)
4,030,000円
(直接経費)
3,100,000円
(間接経費)
930,000円

本研究は、ムチンの水分保持力は腸内細菌叢によって左右されると予想し、ムチン水分保持と腸内細菌との関係性を解明することを目的とする。特に、細菌が腸内で生存する際に産生する代謝物が、宿主に発現する水分子輸送機能への働きかけを明らかにすることを目標とするものであり、昨年度までには、HIK1083ムチン産生は、抗菌性惹起に直接的に関連することを明らかにし、パネート細胞からの抗菌ペプチドは腸内環境に準じて、特定のムチン産生を促す作用がある可能性が示唆されていた。そこで、本年度は、超粘膜傷害を安定的に生じさせることができるNSAIDs誘導性粘膜傷害モデルを使用して、本課題の目的達成を試みた。
ムチン機能として、菌を排除する構造依存性の除菌という従来の考え方から、菌の増殖を抑制する「抗菌」への働きかけの有無を検証するため、その端緒実験として、腸管粘膜傷害モデルマウスの腸内容物を採取し、T-RFLP法により腸内細菌叢の検出を行った。ムチン分泌が削減されるNSAIDs(インドメタシン;IDM)投与モデルを用い、体重、摂餌量、糞便量を測定したところ、投与後に減少を示したが、ヒスタミンH2受容体拮抗薬H2RAを併用すると改善された。IDM投与群では、糞便の水分含量およびpHが変化したが、H2RA併用群では、C群レベルまで改善した。腸内細菌叢解析において、IDM投与でErysipelotrichaceaeが増加し、Clostridialesが減少したが、H2RAを併用によりどちらも回復した。これより、ムチン産生とシンクロが見られるNSAIDsによる消化管炎症では、腸内微生物の割合を変化させ、腸内環境の悪化を招くが、ムチン産生による保護を見込めるH2RAの補充により、粘膜バリアの強化を伴う腸内フローラの正常化を図ることが可能であると示唆された。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-20K08294
ID情報
  • 課題番号 : 20K08294
  • 体系的課題番号 : JP20K08294