MISC

査読有り
2010年

体幹筋トレーニングにおける腹横筋の筋厚の変化:上・中・下部線維の違い

日本理学療法学術大会
  • 森 奈津子
  • ,
  • 池添 冬芽
  • ,
  • 市橋 則明

2009
開始ページ
C3O3071
終了ページ
C3O3071
記述言語
日本語
掲載種別
DOI
10.14900/cjpt.2009.0.C3O3071.0

【目的】<BR>腹横筋は腹部筋の中でも体幹深部筋として脊椎の分節的な支持やコントロールにおいて重要であることが示されている。腹横筋は解剖学的な筋線維の走行の違いから上・中・下部線維に分けられ、上部線維は胸郭の安定性に関与し、中部線維は胸腰筋膜を緊張させ腰椎の安定性に関与し、下部線維は仙腸関節の安定性に関与すると報告されている(Urquhart,2005)。<BR>先行研究により超音波診断装置を用いた腹横筋の筋厚測定の信頼性が検証されており、また腹横筋中部線維の筋活動と筋厚変化は高い相関が見られることが示されている(McMeeken,2004)。また近年、腹横筋のトレーニングとして代表的な腹部引き込み運動(以下Drawing)などにおける腹横筋中部線維の筋厚変化に関して多くの研究報告がなされている。 しかし、腹横筋上部線維や下部線維を含めて体幹筋トレーニングにおける筋厚変化を詳細に検討した報告は見当たらない。<BR>本研究の目的は腹横筋を上・中・下部に分けて、超音波画像を用い5種類の代表的な 体幹筋トレーニングにおける筋厚の変化を明らかにすることとした。<BR>【方法】<BR>健常若年男性30名(年齢20.1±1.6歳、体重73.2±9.1kg、身長173.3±5.6cm)を対象とした。筋厚の測定には、超音波画像診断装置(GE横河メディカルシステム社製,リニアプローブ10MHz)を用い、右側の腹横筋の上・中・下部線維の筋厚を測定した。測定部位は、第8肋軟骨内側縁より2cm内側にて腹横筋上部、臍周囲上腋窩線から2.5cm内側にて腹横筋中部、上前腸骨棘より2cm内側にて腹横筋下部とした。<BR>運動課題は、背臥位においてDrawing、体幹屈曲、左回旋、右回旋、両下肢伸展位挙上30°(以下両SLR )の5つとした。Drawingについては「臍をへこませるように」と指示を与えた。体幹屈曲・回旋運動については、Danielの徒手筋力テストにおけるレベル5に準じ、等尺性収縮時に筋厚を測定した。いずれの測定も最大呼気時に測定した。<BR>各運動時の筋厚と安静時の筋厚の差を安静時の筋厚で除すことにより、運動による筋厚増加率を算出した。部位別の安静時と運動時の筋厚比較および運動による筋厚増加率の比較をFriedman検定の後、多重比較法を用いて行なった。有意水準は5%未満とした。<BR>【説明と同意】<BR>被験者には口頭にて本研究の説明を行い、書面にて同意を得た。<BR>【結果】<BR> 安静時の筋厚は、上部0.52±0.12cm、中部0.46±0.14cm、下部0.64cm±0.15cmであった。<BR>安静時と各運動時の筋厚を比較すると、上部ではいずれの運動時においても有意差はみられなかった。上部の運動時の筋厚増加率は、左回旋(6.5%)、Drawing(4.7%)、両SLR(0.2%)、右回旋(−9.5%)、屈曲(−14.2%)であった。<BR>中部は安静時と比較してDrawing、右回旋、屈曲時に筋厚が有意に大きくなった。筋厚増加率はDrawing(58.0%)、右回旋(43.7%)、屈曲(32.8%)、両SLR(9.2%)、左回旋時(−1.1%)であり、Drawing・右回旋・屈曲は両SLR・左回旋の増加率よりも有意に高く、またDrawingは屈曲の増加率よりも有意に高かった。<BR>下部は安静時と比較して右回旋、屈曲、Drawing時に筋厚が有意に大きくなり、筋厚増加率は右回旋(43.2%)、屈曲(28.3%)、Drawing(27.6%)、両SLR(−8.2%)、左回旋(−11.2%)であり、右回旋・屈曲・Drawingの増加率は左回旋・両SLRに比べて有意に高かった。<BR> 腹横筋の部位による違いをみると、Drawing時の筋厚増加率は、腹横筋中部が上・下部と比較して有意に大きかった。<BR>【考察】<BR>腹横筋の代表的なエクササイズであるDrawingでは、腹横筋のなかでも中部の筋厚増加が大きいことが示された。また、針筋電図を用いて体幹回旋時の腹横筋の筋活動をみた研究において、腹横筋中部・下部は体幹の同側回旋に関与し、上部は反対側回旋に関与することが示されている。本研究においても下部は同側回旋で最も筋厚変化が大きく、上部は反対側回旋で最も筋厚変化が大きく、上部と下部では作用が異なることが示唆されたが、上部の反対側回旋に関しては筋厚増加率が6.5%と比較的小さく、安静時と比較して運動時に有意な筋厚増加を示さなかった。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>本研究で用いた体幹筋トレーニングにおいて、胸腰筋膜を緊張させ腰椎の安定性に関与する腹横筋中部線維のトレーニングにはDrawing 、仙腸関節の安定性に関与する腹横筋下部線維のトレーニングには同側回旋運動が効果的であることが示唆された。

リンク情報
DOI
https://doi.org/10.14900/cjpt.2009.0.C3O3071.0
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/130004582357
ID情報
  • DOI : 10.14900/cjpt.2009.0.C3O3071.0
  • CiNii Articles ID : 130004582357

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