1999年 - 2000年
ミュータントマウスを用いたマスト細胞特異的遺伝子転写機構の解析
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
mi遺伝子座がコードするbasic-helix-loop-helix leucine zipper型転写因子(MITF)によるマスト細胞特異的遺伝子発現機構を、突然変異マウスを用いて解析した。mi遺伝子座には多くの突然変異マウスが報告され、分子レベルで異常点が明らかとなっているものも多い。一つの転写因子でこれほど多くの突然変異マウスの存在する例は他になく、転写因子の機能をin vivoで解析できるよい系である。mi遺伝子座の突然変異マウスのうち、mi/miマウスは異常なMITF(mi-MITF)を正常量発現するのに対し、tg/tgマウスはプロモーター領域への挿入突然変異によりMITFを発現しない。mi/miマウスとtg/tgマウスのマスト細胞の表現型を比較すると、mi/miマウスのマスト細胞でより異常の程度が強かった。このことは、mi-MITFが転写に対して抑制的に働くことを示唆する。今回、zipper domainを欠損するmi^<・ce>/mi^<・ce>マウスのマスト細胞をtg/tgマウスと比較し、MITFの機能におけるzipper domainの重要性を検討した。その結果、mi^<・ce>/mi^<・ce>マウスのマスト細胞の異常の程度は、tg/tgマウスのマスト細胞の異常の程度と同程度で、zipper domainがMITFの機能に重要であることがわかった。また、以前mi/miマウスの皮膚マスト細胞でヘパリン含量の減少を報告したが、その機構として、ヘパリンの糖鎖硫酸化に関与するN-deacetylase-N-sulfotransferase2(NDST-2)をコードする遺伝子の発現に転写因子GABPが関与すること、更にmi-MITFがGABPの活性を抑制してNDST-2遺伝子の転写レベルを低下させることを明らかにし、MITFを中心とした転写因子ネットワークがマスト細胞の分化に重要であることも明らかにした。
- ID情報
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- 課題番号 : 11694272
- 体系的課題番号 : JP11694272