自閉症スペクトラム者の中には、視覚的な情報を遮断されると身体部位を認識できなくなるといった、体性感覚の処理や認識に問題を抱える人がいる。本研究では、定型発達者15名を対象に開眼、閉眼、視覚課題提示の3条件下で体性感覚誘発電位(Somatosensory Evoked Potentials:SEP)を測定し、開眼及び視覚的注意が体性感覚処理に及ぼす影響を調査した。さらに、自閉症スペクトラム指数と日本語版青年・成人感覚プロファイル(Adolescent/Adult Sensory Profile:AASP)との相関についても調査した。本研究の結果、N30-P45における頂点間振幅は、閉眼条件に比べて視覚課題提示条件の方が有意に小さかった。また、SEP振幅の条件間の差とAASPのスコアとの間に、負の相関が認められた。本研究の結果から、視覚情報に注意を向けた際には、体性感覚野の活動が抑制される可能性が示唆された。また、SEP振幅の減衰は、感覚処理特性の偏りと関連していることが推察された。(著者抄録)