2020年6月1日
当院の不育症患者に対するステロイド治療の検討.
現代産婦人科
- 巻
- 68
- 号
- 2
- 開始ページ
- 201
- 終了ページ
- 205
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- 研究論文(学術雑誌)
- 出版者・発行元
- 中国四国産科婦人科学会
【緒言】抗リン脂質抗体症候群など不育症の治療法として、現在は低用量アスピリンとヘパリンカルシウムの併用療法が主流となっている。しかしながら抗凝固療法だけでは流産を反復する難治性の症例も存在する。当院で施行している不育症患者に対するステロイド治療につき検討する。【対象】2008年4月から2018年12月までに当院不育症外来を受診し、妊娠中にプレドニゾロンの投与を行った60症例について倫理委員会の承認のもと後方視的に検討した。患者の背景、スクリーニング検査で施行した不育症リスク因子の検査、妊娠が成立した場合の妊娠予後や妊娠中の合併症、流産した場合の染色体異常の有無につき検討した。【結果】症例の年齢は36.7±4.0(mean±SD)歳、妊娠回数4.1±2.4回、流産回数3.6±2.5回、生児の数は0.30±0.5人であった。生化学妊娠は妊娠回数から除外した。妊娠予後として、妊娠経過が判明した51症例のうち、34症例は生児を得られた。17症例は流産となり、そのうち6症例には染色体異常を認めた。染色体異常を除いた全体の生児を得た率としては75.6%であった。また当院では治療方針としてのステロイドの内服量を妊娠前に決定しているが、プレドニゾロンの内服量として5mgと10mg、20mgの症例が存在した。それぞれの染色体異常による流産を除いた生児獲得率としては81.8%、71.4%、75.0%となった。全体として、1例に早産を認め、6例に妊娠糖尿病を認めた。【結語】抗凝固療法のみでは生児を得られていなかった症例においても、副腎皮質ステロイドを併用することで生児を得られており、不育症の患者に対するステロイド治療の有用性が示された。易感染性による切迫早産や、耐糖能異常などのリスクに注意して投与することが必要であるが、通常の治療法では流産を反復する難治性の症例などについては治療のステップアップとしてステロイド治療を提示することが可能と考えられる。(著者抄録)
- ID情報
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- ISSN : 1882-482X
- 医中誌Web ID : 2020308480