共同研究・競争的資金等の研究課題

2020年7月 - 2023年3月

植物ステロイドホルモンが昆虫の記憶を操作する分子神経機構

日本学術振興会  科学研究費助成事業  挑戦的研究(萌芽)

課題番号
20K21307
体系的課題番号
JP20K21307
配分額
(総額)
6,500,000円
(直接経費)
5,000,000円
(間接経費)
1,500,000円

本研究の目的は、昆虫の行動は植物ステロイドホルモンを介した記憶増強によって植物側から操作されている、という大胆な仮説の証明とその分子神経機構の解明にある。本研究者は最近、植物ステロイドホルモンには昆虫の脳に作用して記憶を増強する作用があることを見出した。これは従来考えられてきた植物が昆虫に従属する関係とは逆に、植物が昆虫の行動を操作する機構を進化的に獲得してきた可能性を示すものである。本研究では、訪花性昆虫のモデルとしてミツバチの働き蜂を、分子遺伝学的解析のモデルとしてショウジョウバエを用い、植物ステロイドホルモンが昆虫の脳機能や行動に作用する分子神経機構を明らかにし、本仮説をメカニズムに裏打ちされた形で証明することを目指す。
昨年度までの結果より、Hr38はドーパミン細胞で機能することが長期記憶に重要であることを見出していたので、今年度は、この神経回路に植物ステロイドホルモンが作用するかということを検証した。まず、植物ステロイドホルモンがどの程度の濃度で作用するのかということを検証した。具体的には様々な濃度の植物ステロイドホルモンを餌に混ぜて与えたショウジョウバエを用い、求愛可塑性の測定によって、長期記憶形成を促進する閾値を決定した。次にその閾値を十分に超す濃度で植物ステロイドホルモンを与えた個体を用い、ドーパミン細胞でHr38をノックダウンした場合に、長期記憶形成の促進が障害されるか検証した。その結果、Hr38を記憶学習時特異的にドーパミン細胞でノックダウンすると、植物ステロイドホルモンの作用が消失することが確認された。本結果により、植物ステロイドホルモンはドーパミン細胞のHr38に作用していることが明らかとなった。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-20K21307
ID情報
  • 課題番号 : 20K21307
  • 体系的課題番号 : JP20K21307