共同研究・競争的資金等の研究課題

2018年4月 - 2021年3月

戦前期東京・大阪株式市場の統合過程と価格形成機能の数量的分析


配分額
(総額)
4,290,000円
(直接経費)
0円
(間接経費)
0円
資金種別
競争的資金

本研究課題の2年目にあたる令和元年度は,平成30年度収集史料の分析に力点を置いた。その作業内容は,以下2点に集約できる。第1に,史料の調査を主に担当している研究代表者(花井)と研究分担者(前田)は,平成30年度に収集した東京株式取引所調査課編「全国取引所営業概表」(1919–30年)より全国全ての株式取引所と商品取引所の取引データを網羅的に検討した。以上の検討より以下4点が明らかになった。第1に,東京・大阪で営業した4取引所(東京株式取引所,大阪株式取引所,東京米穀商品取引所,大阪堂島米穀取引所)の取引規模は他所を大きく超越していた。第2に,上記4取引所における東京・大阪間の大小関係(取引量)は株式取引と米穀取引で異なった。すなわち,株式取引は東京が大阪を,対照的に米穀取引は大阪が東京を上回った。第3に,小規模な地方取引所における取引量は上記4取引所より相対的に変動が大きかった。第4に,地方小規模取引所における先物取引の現物受渡は低調であった。第2に,時変計量経済モデルに基づく分析を主に担当している研究分担者(野田)は,1878-1943年における株価形成の情報効率性を検証した。これまで研究分担者(野田)は戦前期日本における米穀市場を考察の俎上に載せ,米価形成の情報効率性が通時的に変動した史実とその要因を明らかにしてきた。そして,かかる既往の研究成果と同様に,株価形成の情報効率性もまた通時的に変動していた史実を計量分析より解明し,ディスカッションペーパーとして纏めた。本研究課題は,第1に株価データ等を用いた株式取引所における価格形成の分析,第2に財務諸表等を用いた株式取引所経営に関する経営史的分析から構成される。これらのうち第1の課題に対応した成果は,上記【研究実績の概要】で先述したように,研究分担者(野田)によってディスカッションペーパーとして発表された。一方で,第2の課題について現時点まで明確な成果は得られていない。しかし,かかる状況は平成30年度「研究実施状況報告書」で詳述したように,未見の新史料として発掘された東京株式取引所調査課編「全国取引所営業概表」の分析を先行させているために生じている。したがって,研究内容としては本研究課題申請時より豊富化している。そこで,現時点までに本研究課題の進捗状況は「(2)おおむね順調に進展している。」と判断しうる。令和2年度には以下3点の作業を進めたい。第1に,上記【研究実績の概要】で列挙した「全国取引所営業概表」による分析結果を纏める。本作業より戦間期の全国における先物取引の網羅的な概観が可能となり,それは以下に示す第2の作業の準備段階としても位置付けられる。第2に,株式取引所経営に関する経営史的分析に必要な東京株式取引所の貸借対照表と損益計算書を復元し,それら財務諸表から研究代表者(花井)と研究分担者(前田)が中心となって戦前期株式取引所経営の動向を検討する。第3に,研究分担者(野田)は1878-1943年株価形成の情報効率性を検証したディスカッションペーパーの国際学術誌掲載を目指す